昨年1年間で過去最多となる38回、72発のミサイル発射実験を行い、昨秋には核を先制攻撃に使用する条件を定めた核武力の法制化を宣言した北朝鮮。
金正恩総書記は、公の場への登場が初めてとなる娘のジュエをミサイル発射実験の現場に同行させ、140tの大出力固体燃料エンジンの燃焼実験に初めて成功したことを発表したすぐ後には、ソウル市内中心部にある大統領府近くにまで無人機を侵入させた。
北朝鮮国内でも動きがあった。2019年にベトナム・ハノイでの米朝首脳会談で交渉に当たった李容浩元外相が粛清され、処刑されたというニュースが年明け読売新聞から報じられ、韓国の国家情報院が粛清を確認している。
一連の動きの先にあるのは第7次核実験なのか。その可能性と北朝鮮内部の状況について、2016年、家族を伴い韓国に亡命した駐英北朝鮮大使館の元外交官で、2020年の総選挙で与党「国民の力」の国会議員(1期目)となり、現在、国会の外交統一委員会で幹事を務める太永浩議員に話を聞いた。
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北朝鮮の今年最大の目標は
――元旦に朝鮮労働党中央委員会総会の報告書が発表されました。その中で日米韓は「アジア版NATO(北大西洋条約機構)のような新しい軍事ブロックの形成に没頭している」とし、韓国については「われわれの明白な敵になりつつある」と断じました。また、「核爆弾の保有量を指数関数的に増やす」と今年の軍事目的を明らかにもしています。北朝鮮は今年の最大の目標をどこに定めているのでしょうか?
「報告書は戦術核兵器の大量生産と軍事衛星、新しいICBM(大陸間弾道ミサイル)に言及しましたが、今、もっとも集中しているのは固体燃料エンジンの開発です。固体燃料は液体燃料よりも長期保管が可能で、なにより注入が速やかなので探知や迎撃が難しいといわれます。ですから、固体燃料エンジンを使ったICBMの発射実験を今年中に必ず行うでしょう。
金正恩が昨年末の全員会議の後に、娘を伴ってミサイル弾頭を保管している基地に赴いたことからもそれは明らかで、核ミサイル分野では青写真が具体化されていると思います」
――今年、第7次核実験を行う可能性についてはどう見られますか?
「第7次核実験については、私は行わないと見ています。
来年2024年は米国で大統領選挙が行われますから、北朝鮮との交渉は難しくなる。北朝鮮は今年中になんとかして米国と交渉の場を持とうとするでしょう。そのため、核実験は行わないと思います。