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「金日成の責任書記という幹部の子女で、金のスプーン(韓国の出身階級を指す言葉。親の収入によって、金、銀、銅、土のスプーンに例えられる)出身ですから、すべての科目で高得点をあげなければ出世できない私のような土のスプーン出身者とは違い、よい機関で働くのに必要な科目、つまり英語と外交だけに集中していた印象です。

 実力で出世するのではなく、人間関係、人脈で勝負するタイプです。李容浩がいない今は、海外出張の際にお土産を購入して贈るなど、おそらく金与正や李雪柱との関係を重視しているでしょう。

崔善姫外相 ©AFP PHOTO/KCNA VIA KNS/時事通信社

 姜錫柱(金日成、金正日国家主席時代の外交官)は、哲学とビジョンがあった。だからこそ金正日を説得もできたし、李容浩だったら新しい道を模索するでしょうが、崔にはそんな力量はありません。崔は外相といっても軍の強硬勢力に合わせて動くと思います」

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日本はもっと柔軟に動いたほうがいい

――日本の拉致問題について伺います。被害者の家族も高齢となり解決を急がなければなりませんが、突破口はどこにあると思いますか?

「日本は拉致問題の解決がなければ北朝鮮との関係改善はないと言い続けてきましたが、この方法では進展がありません。まず、対話を始めることです。人道的協力などの話の中に拉致問題をいれることをしながら、北朝鮮が対話にでてくるような誘因策を提示する。

 2014年の日朝のストックホルム合意では、北朝鮮は日本人に関する調査を行うという微妙な変化を見せていました。これを逃してはいけない。このストックホルム合意を生かして、もう一度調査してみましょう、という言葉を再び北朝鮮から引き出すことが重要です。日本は目的のためにもっと柔軟に動いたほうがいいと思います。政治家が介入するのではなく、外交官に一任するのはどうでしょうか」

アジアで核保有のドミノ現象が起きる可能性

 インタビューでも触れたが、北朝鮮の動きを巡り、韓国では今、独自の核保有論が頭を少しずつもたげている。

 昨年の世論調査ではおよそ70%が核保有に肯定的という結果が出ており(韓国リサーチ、2022年2月21日)、10月に行った調査でも「独自の核武装賛成」が35.2%、「米国の戦術的核再配備賛成」が16%(RNリサーチ、同年10月19日)と独自の核保有への賛成のほうが多かった。

 独自の核保有に賛成の理由として、もし米国と北朝鮮が核軍縮交渉を行うことになれば、非対称戦力である北朝鮮の核に対応するために韓国でも核を保有すべきということがあげられている。

 北朝鮮の動きによっては核を保有する前段階まで進めるべきという声もあり、1月11日には、尹大統領も今後、北朝鮮のミサイル発射実験などが続けば、韓国も独自の核を保有する可能性について外交部・国防部の業務報告の場で言及した。韓国の大統領が核保有について公の場で発言するのは初めてだ。

 もし、韓国が核保有へと向かえば、アジアで核保有のドミノ現象が起きる可能性も否定できない。

 唯一の被爆国として、日本はもし韓国が独自に核を保有しようとする場合、どうするのか。明確なメッセージを持たなければならない。