「北朝鮮が最高人民会議で核武力征服の法制化を宣言した昨年9月、韓米は、この比例対応として大規模な合同軍事訓練を行いました。これまで飛ばしていなかった飛行機も飛ばし、戦艦も浮かべた。
国内向けにも黙っているわけにはいかなかった金正恩はこれに対抗して150機の戦闘機や爆撃機を飛ばしましたが、10年間ほど訓練ができず、しかも古い飛行機ばかりだったので途中で引き返したのも出た。実は北朝鮮軍内部では、燃料も食料もない上に、こんな古びた武器で戦争ができるのかという現状への厭世思想が根深く、十分な訓練ができないことへの非常が不満が多い。それが明るみに出たのです。
また、北朝鮮は10年前から固体燃料エンジンでミサイルを発射すると宣言し、この分野では韓国より進んでいると自負していたのが、韓国が米国から使用許可が下りてからわずか1年も経たないうちに固体燃料エンジンでの発射に成功してしまった。金正恩の怒りと焦燥は相当なものでしょう。
また、北朝鮮から韓国に侵入した無人機を韓国軍が撃墜できなかったことが大きく報じられましたが、その後、韓国も北朝鮮に無人機を送ったところ、北朝鮮は探知すらできませんでした」
経済制裁に意味はあるのか?
――太議員は一貫して「北朝鮮は核を放棄しない」と訴えてきました。
「金正恩の政権維持の基本は核とミサイルです。核は絶対に放棄できません。核という非対称戦力を持つことで韓国を抑えられ、北朝鮮軍をコントロールできると信じている。軍をコントロールできれば世襲が維持できる、そう考えている。
北朝鮮は中国やインド、パキスタンが核を保有してどんな道をたどってきたかを見てきましたから、自分たちも同じ道をたどることができると信じています。ですから、米国が北朝鮮の核保有を認めないのは、北朝鮮が十分に米国を打撃できる、ロサンゼルスやニューヨークに届くICBMの能力を見せていないためと考えているのです」
――最近では、米国の一部で核軍縮交渉に向かうことが現実的ではないかという声もでていました。どう考えますか?
「現状を放置していれば北朝鮮の核だけを高度化させてしまう。ならば核軍縮交渉により北朝鮮の核の脅威を抑えようということですが、核軍縮交渉を行えば、北朝鮮は、核実験もミサイル発射実験もしないモラトリアムを維持する代わりに経済制裁の解除を要求するでしょう。制裁が解除されれば、北朝鮮は一方では核を持ち、経済的にも発展してしまう。
また、韓米合同訓練の中止、戦略資産の配置禁止などを求めて在韓米軍の撤収も要求するでしょう。北朝鮮は核を持ってこそ米国が去ると信じているのです。