いま、台湾が危ない。

 中国の習近平国家主席は昨年秋の共産党大会で「決して武力行使の選択肢を排除しない」と強調し、台湾周辺海域での軍事演習を立て続けにおこなっている。昨年8月、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が訪台した時は、大量のミサイルを台湾に向けて発射し、そのうち5発は日本の排他的経済水域に落下した。

 はたして台湾はこのまま中国に呑み込まれてしまうのだろうか?

ADVERTISEMENT

 中国に詳しいルポライターの安田峰俊氏は、このたび台湾軍の軍事演習「春節加強戦備」のプレスツアーに、日本人として唯一参加。さらに台湾の著名な軍事研究者たちにインタビューを重ね、「文藝春秋」3月号にレポートを発表した。

◆ ◆ ◆

「米軍の海兵隊と変わらない」

 今回公開された台湾陸軍の演習は、台湾の都市部にヘリボーン(ヘリコプターを用いた部隊展開)強襲をかけた人民解放軍を迎え撃つ対処訓練だった。

台湾空軍のミラージュ2000戦闘機 著者撮影

〈まず、赤帽子姿の中国兵役の兵士たちが、輸送ヘリCH−47からバラバラと飛び降り建物を占拠する。対して台湾軍は戦術ドローン「魔羯(モォジエ)」で索敵し、スナイパーのライフル狙撃によって敵の頭数を減らす。やがて、銃撃で抵抗する敵部隊に向けて、台湾の国産戦車CM−11・勇虎(ヨンフゥ)と装甲車CM−32・雲豹(ユンバオ)を突っ込ませる。

 最後は米国製の攻撃ヘリコプターAH−1Wスーパーコブラが空から攻め寄せ、残敵を掃討する……。〉

敵の建物に向けて銃弾を撃ち込みつつ接近

 さらに今回は、台湾版の海兵隊「海軍陸戦隊第99旅団」による実弾を使用した戦闘訓練も公開された。

〈台湾製ドローン・紅雀(ホンチュエ)による索敵後、水陸両用車AAV−7から降り立った迷彩服姿の兵士たちが、敵の建物に向けてロケットランチャーや銃弾を撃ち込みつつ接近する。やがて排水管などをつたい屋根に向かう組と入口に回る組に分かれ、入口組はドアを蹴り飛ばして室内にスタングレネードを投擲。爆発後に突入して制圧していく。負傷した兵士は自身で応急手当をおこない、他の兵士が背負って戦線から離脱させる。