米軍の『星条旗新聞』のアメリカ人記者が、「米軍の海兵隊と変わらない」と練度を盛んに褒めていたのが印象的だった。〉
「手を出すと面倒だ」と中国に思わせる戦略
しかし、中国は軍事費を毎年2桁のペースで増額しており、質量ともに強化が著しい。そんな中国に、台湾はどう対抗するのか?
人民解放軍研究の第一人者である淡江大学国際事務・戦略研究所助教の林穎佑(リン・インヨウ)の談話を紹介しよう。
――台湾側の防衛戦略は?
〈かつて蒋介石は「反抗大陸」(中国大陸の奪還)を唱え、強大な陸軍の建設を目指していましたが、これは時代遅れです。民進党の陳水扁政権(2000~2008)は「有效嚇阻、防衛固守」(有効な抑止力と専守防衛)を唱え、この方針は多少の手直しはあれど、現在の蔡英文政権まで続いています。
すなわち、たとえ台湾の軍事力は人民解放軍より弱いとしても、戦えば相当な被害が発生すると、北京のリーダーたちに認識させる。あちら側に「手を出すと面倒だ」と感じさせる。それこそが、われわれにとっての勝利ということになります。〉
ミサイルの3分の1がまともに稼働しなかった
林氏によると、昨年のペロシ訪台後の大演習からは、中国人民解放軍の“弱点”が窺えるという。
〈なにより「稼働率」の問題です。ちなみに今回、日本の自衛隊は中国のミサイル発射数を9発と発表していますが、レーダーの角度の問題から捕捉が漏れたものがあるようで、われわれ台湾の観測ではミサイルは11発でした。ところが、中国側の国営放送局CCTVが発射の当日の午後3時に準備したニュース原稿では、当初「16発」と発表されることになっていたのです。
プロパガンダ媒体であるCCTVの性質から考えて、この数字は事前に軍によって提供されたものだと判断できます。つまり、本来は16発を撃つはずだったものが、なんらかの不具合によって5発が不発になったとみられます。予定したミサイルの3分の1がまともに稼働しなかったとすれば、これは軍事的にはかなり深刻な問題です。〉