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 それはつまり、ウクライナ戦争におけるロシア軍と同じような問題が、中国人民解放軍にもあるということになる。

〈そもそも、中国の兵器や戦術はロシア(ソ連)から取り入れたものが多い。ロシア軍が持つ弱点は、人民解放軍も共通して抱えている可能性が高いと考えられます。〉(林氏)

離島奪還を模した訓練 著者撮影

中国が戦争できるのは2035年以降

――では、中国による台湾侵攻は近いとみるか?

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〈そうは思いません。ウクライナ戦争によるロシア軍の意外な苦戦と、昨年8月の大規模演習によって、人民解放軍は新たな多くの課題があぶり出されました。一定期間の調整を必要としているはずです。米軍ですら、ベトナム戦争後の軍の改革には長い時間を費やしましたから、中国も軍制改革を終えて戦争ができる状態になるまで、かなりの時間を要すると思われます。〉

 いったいなぜ、中国は戦争ができないのか?

 ここで林氏は「軍医」という意外なキーワードを口にした。

〈私は以前、中国の軍医病院の状況を調査したことがあります。軍そのものではなく病院の情報ならば比較的公開性が高く、外部から調べやすいのです。

2017年に軍校の教育を大幅に刷新

 分析の結果、新型コロナウイルスの流行初期に、彼らの病院においてマスクをはじめとした物資の輸送や手配にかなりのもたつきがあったことが判明しました。軍制改革後の人民解放軍の後方支援業務は、必ずしも順調におこなわれていない。間接的にそうした推測が可能です。

 人材の問題もあります。中国は軍制改革の一環として、2017年に(軍事科学院や国防大学などの)軍校の教育を大幅に刷新しました。改革後の軍校で新しい教育を受けた幹部候補生が、軍の中心となるのは2030年代になってからです。

 中国が充分に戦える状態になるのは、私は2035年ごろだろうと想定しています。

 ただ、アメリカや台湾も相応の対策を立てますから、それ以降も中国が攻めてくるのは必ずしも容易ではないはずですよ。〉

 2月10日発売の「文藝春秋」3月号および「文藝春秋 電子版」では、安田峰俊氏による迫真の現地報告『台湾最前線ルポ「中国の意外な弱み」』を掲載している。

文藝春秋

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台湾最前線ルポ「中国の意外な弱み」

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