文春オンライン

「他国は“それ”が上手くいっていませんでした」栗山監督と対戦国陣営の采配面での“決定的な違い”とは

第1回WBC優勝メンバー・薮田安彦が見た侍ジャパン

2023/03/15
note

栗山英樹監督から投手陣への“配慮”

「普段、自分のチームで先発を務めているピッチャーが、ゲームが流れている途中にマウンドに立つのは非常に難しいものがあるんです。ヨーイドンで自分でペースを作りながら長いイニングを投げているわけですからね。ただそこは栗山英樹監督も配慮し、ランナーが残った状態で第2先発をマウンドに立たせることなく、イニング頭から投げさせていました」

 象徴的だったのが第3戦のチェコ戦、4回表2アウト、走者一塁の場面だ。球数制限を迎えた先発の佐々木に代え、宇田川優希(オリックス)を投入しチェンジにすると、次の5回頭から宮城をマウンドに送っている。

チェコ戦で第2先発を務めた宮城大弥投手 ©佐貫直哉/文藝春秋

「第2先発を務めたピッチャーはとても難しい役割だったと思いますが、打たれたとしても最少失点で収め、しっかりとイニングを稼いでくれていたと思います」

ADVERTISEMENT

 またリリーフ陣もほぼ盤石であり、侍ジャパンの層の厚さを見せつけた。

「球数30球に達すると中1日空けなければいけないルールがあるのですが、他国は連投を考え29球でリリーフを交代するケースが多く、結果的にそれが上手くいっていませんでした。日本は30球に達したとしても、明日投げるピッチャーを計算できていたので、そのへんでも上手く戦えたと思いますね」

 また打線に関しては、1番ラーズ・ヌートバー(カージナルス)、2番近藤健介(ソフトバンク)、3番大谷の上位打線が機能していた。

侍ジャパンの切り込み隊長として活躍するラーズ・ヌートバー選手 ©佐貫直哉/文藝春秋

「やはり早い段階で得点することは国際試合では重要ですし、上位3人の出塁率は5割を超えていますから相手にプレッシャーを掛ける理想的な流れができました。打線が繋がり、下位打線がチャンスを作り、上位打線でランナーを返すなど、まさに“線”になっていました。感じたのは栗山監督の選手たちへの信頼です。また選手たちも栗山監督がやりたい野球、勝つために何をすればいいのか各々が理解していると思いました。例えばヌートバー選手の打席を見ると、それほど強振することなくコンパクトにセンター方向に強い打球を放とうとしている。ああいう決して大振りしない姿を見ると、チームとして戦えているなと感じられます」