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骨折を乗り越えて…ソフトバンク育成2年目の川村友斗が抱く「今しかない」という思い

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/03
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「今しかない」という必死さ

「リハビリに行って1ヶ月も(離脱)ってなったら、やっぱりチャンスも減ってくると思うんで、トレーナーさんにも無理言って、何とか早く復帰出来ました。トレーナーさんの協力のお陰です」

 たしかに、今もリハビリ組に在籍する選手が多くいる。長いプロ野球生活を思えば、無理すべきでない時期もある。離脱せざるを得ない怪我も当然ある。ホークスには素晴らしいリハビリ担当スタッフ、トレーナーさんたちがたくさんいて、選手たちに寄り添って復帰をサポートしている。それでも、ゆっくりしていられない立場の選手は、受け身に治るのを待っているだけでは道は開けないだろう。川村選手の復帰は、禁じ手だった部分もあるかもしれない。川村選手も今となっては「めっちゃ痛かったですよ」と笑って振り返るが、これくらいの根性がないと、この世界で生き残ってはいけないと感じた。

©上杉あずさ

 また、それほど必死になるのには「今しかない」という思いがあったからだ。

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「せっかく今年、オープン戦で名前を覚えてもらったので、今年しか(ない)。来年だともっと難しくなると思うんですよね。今年が本当に勝負だと思っているので。今年はあと1ヶ月しかない」

 正確には、支配下登録期限の7月31日までこの時点で残り約2ヶ月半だった。それを1ヶ月と表現したところからも「今しかない」という必死さがヒシヒシと伝わってきた。

 以前、小久保2軍監督は「ちょっと優しすぎるというか……」と川村選手が性格面で“いい人過ぎる”ことに、勝負師としての物足りなさを感じていたが、もう今は違う。オープン戦で1軍を経験したことで芽生えた自信や、「ここでやりたい」という思いが、自分自身を強くしてくれた。

 現在は2軍にいる川村選手。2軍の外野手も競争が激しく、スタメンで出られないこともあるが、とにかく目の前のことに一生懸命になり、必死に食らいつく覚悟だ。優しいベールの下に隠された強き思いが、支配下登録を手繰り寄せるはずだ。

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