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批判を浴びやすい“巨人の捕手”という宿命 大城卓三、小林誠司が共存するための最適なシナリオ

文春野球コラム ペナントレース2023

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 プロ野球ファンの方々なら、一度は誰かと野球談議をやったことがあるのではないでしょうか。

 仮説を立て、データを検証してみては、あーでもないこーでもないと議論する。プロ野球は年間800試合以上開催され、さらにその歴史が90年に迫るモンスターコンテンツなので、検証するデータも豊富です。

 僕にも野球談議に花を咲かす友人がいます。その友人と幾度となく盛り上がり、検証している仮説があります。

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ジャイアンツ、優勝への希望

 それが「優勝チームに強打の捕手アリ」です。

 ここで指す「強打」の基準としては、「打率.250以上」か「年間ホームラン10本以上」のどちらかを達成しているというもの。DH制のないセ・リーグでは、特にこの傾向が強まります。

 2000年以降に絞っても、2001年のヤクルトには古田敦也さん。2003、2005年の阪神には矢野燿大さん。2007~2009、2012~2014年のジャイアンツには我らが阿部慎之助さん。2016~2018年に3連覇した広島には、會澤翼選手がいました。

 我がジャイアンツの今季はというと、扇の要に主に座るのは大城卓三選手。6月8日の時点で打率.268、ホームランは8本。打率のよさはもちろん、ホームランは年間20本を超えるペースです。

 今季はWBCを経験してからシーズンインしました。WBCでの出場は限定的だったとはいえ、世界一の侍ジャパンのメンバーを扇の要に据えられるのですから、ぜいたくの極みでしょう。

 ルーキーイヤーから83試合に出場。それ以降もコンスタントに出場を続け通算打率は.259。入団以来「打てる捕手」を体現してきたのが大城選手です。

 打撃面に比べ話題にあがることが少ない守備面も一流。捕手の花形指標である盗塁阻止率は、ここ数年は常にリーグ上位です。リーグ1位を記録した年もありました。

 大城選手が今後数年間のジャイアンツの捕手を務めてくれることが、強いジャイアンツへの1つの条件。それが私の考えです。

 しかし、この考えと同時に私には絶対に見てみたい未来があります。

 その未来の主役は2人。1人はここまで語らせてもらった大城選手。そしてもう1人は、小林誠司選手です。

 大城選手より4年早くプロ入り。高い守備力が評価され侍ジャパンに選出され、2017年のWBCでは記録にも記憶にも残る活躍をしました。球場には小林選手のユニフォームを着たファンが数多く押し寄せる人気選手です。

小林誠司(左)と大城卓三 ©時事通信社

ぜいたく過ぎる2番手「俺たちの誠司」

 今季の小林選手はここまで13試合出場、立った打席は8打席と完全に大城選手に正捕手を譲っている形です。

 アマチュア球界でエリートとして名を馳せながらも、大卒社会人経由とプロ野球入りまで長い時間を要した両名。

 現在、レギュラーの大城選手はリード面など目に見えない守備に関して、チームの状況の悪さも手伝いメディアでたびたび批判にさらされています。小林選手も入団時やレギュラーを張っていた時には、偉大すぎる先輩・阿部慎之助さんと比較され批判にさらされることが多かったです。

 この両名に対する批判は納得いくロジカルな内容のものもありますが、理不尽な悪口のように感じる内容も多いです。しかし、そういった批判の矢面に立つのも、捕手というポジションの宿命のようにも思います。

 ジャイアンツファンとしては、何とか並び立ってほしいこの両雄。かなうとしたらどんな形なのか……。

 そこで私の頭に浮かんだのが1人の選手でした。

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