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「“300人乱交写真集”制作に数千万円注ぎ込むなんて、アンタ狂ってる!」…鬼才・大橋仁(50)は、ナゼ自腹を切ってまで作り続けるのか?

「“300人乱交写真集”制作に数千万円注ぎ込むなんて、アンタ狂ってる!」…鬼才・大橋仁(50)は、ナゼ自腹を切ってまで作り続けるのか?

2023/08/03
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 欲望の探究はさらに先へ進む。下着の写真を撮りながら、素っ裸の女性よりも色々な模様や柄のパンティを穿いているほうに強く反応してしまうのはなぜかと考えていて、類似するものに思い至った。昆虫の生態である。  

なぜパンティに燃えたぎるのか。辿り着いた先に見つけた答え

「テントウムシやカミキリムシにコガネムシ、昆虫たちの体の表面に柄がついているのはなぜなのか。昆虫たちはその進化の過程でなぜ、色や柄を背負うようになっていったのだろう。擬態することで天敵を避ける必要もあっただろう。しかし聞けばあるチョウは、その体表の柄で異性を呼び寄せる習性があるというのです。そのチョウのオスと自分は、まったく同じ生殖反応を示しているわけですね。視覚から入ったものに興奮して、メスにふらふら寄っていって、生殖行為をしているんですから。

 ヒトが昆虫からどれほど進化したものなのかはわかりませんが、根っこの部分でやっていることはほとんど同じ。昆虫だろうと人間だろうと、興奮する→セックスする→子どもが生まれる、というのが生命をつないでいく基本のかたち。どれだけ生命が進化したって変わらないその根っここそ、表現として定着させたいという気持ちになりました。アマゾンの奥地の誰も見たことのない新種の虫の姿が、パンティを身につけた女性の姿と重なっていったのです」

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『はじめて あった』より

 大橋は昆虫標本などを各所で見まくるようになり、昆虫の体表にクローズアップした写真を撮り溜めていった。

 こうして写真集は、時間をかけて徐々に出来上がっていった。死に瀕した母、下着への執着という性癖、昆虫の体表。これら被写体は一見すると脈絡がないけれど、ページを繰っていてまったく違和感がないのは不思議だ。