文春オンライン

「最寄り駅」があまりに“非日常な駅”になったら…? ずいぶん“ハリー・ポッターっぽくなった”「豊島園」をめぐる“魔法の話”

豊島園の1世紀 #2

2023/07/17

genre : ビジネス, 企業

note

 いささか哲学的になってしまうが、駅とはいったい何だろうか。電車に乗るところ、などと言ってしまえばそりゃそうだ。が、ここで問題にしたいのは、もっと心情的な部分に見せてくれるモノなのだ。その部分においての、駅とは何か、である。

 たとえば、いつも使っている家の最寄り駅。これに何かの感情を抱くことはあまりない。ただ、しばらく帰っていない故郷の実家の最寄り駅となると話は別だ。

 昔、毎日使っていたときはなにも思わなかったのに、久々に帰省してみるとなんだか懐かしく感じてしまったり。はたまた、駅舎がリニューアルされていてすっかり装いを新たにしていると、便利なのかも知れないけど味気ないなあ、なんて感想を持ってしまったりもする。

ADVERTISEMENT

 また、遊びに出かけた先で降りた駅は、楽しみな気持ちで胸が高鳴るワクワクの駅だ。だからといって、誰もがそうであるわけではなく、その駅を日常的に使っている地元の人からしたら、何のことはない普通の駅にすぎない。

 つまり、駅というのは人それぞれ、また同じ人でも状況次第、そのときの気持ち次第でいろいろな姿を見せるものなのである。裏を返せば、駅はそのいろいろな人、いろいろな状況を受け止める存在でなければならない。懐の深さ、というのが必要なのだ。

 そんな御託を並べたところで、今回は駅の話である。西武鉄道豊島園駅だ。駅の名前からわかるとおり、ちょっと前まではとしまえんの最寄り駅だった。そしてこのたび、としまえんの跡地にハリー・ポッターのエンターテイメント施設「スタジオツアー東京」がオープンした。

 豊島園駅も、それにあわせてリニューアル。作中に出てくるホグズミード駅を彷彿とさせる、魔法の世界観に満ちた駅になりました、というわけだ。あの、庶民的なゆうえんちの最寄り駅が魔法の世界に。はたしてどんなことなのだろうか。

 

じつはリニューアルしたのは豊島園だけじゃなく…?

「リニューアルは豊島園駅だけではなくて、池袋駅もです。ハリー・ポッターのスタジオツアー東京ができるということで、その世界を池袋と豊島園で表現しようということになって、リニューアルを行いました」

 こう話してくれたのは、今回の駅リニューアルを担当した西武鉄道工務部施設課の五味仁美さん。入社以来、長年駅のリニューアルなどに携わってきた、いわば“駅リニューアルのプロフェッショナル”である。

五味仁美さん

「豊島園駅はスタジオツアー東京の最寄り駅ですが、入口としては池袋。池袋から西武線に乗って来ていただきたい、ということからふたつの駅をリニューアルしました。豊島園駅は最寄りなので、まるごとキレイに。池袋駅は、普段の通勤通学のお客さまも多いので、主に豊島園行きの電車が発着する1・2番ホームだけに限定してリニューアルしています」(五味さん)