だいたい東京の駅は、どこに行っても高架から地下まで幾重にも乗り場が重なっていて複雑怪奇にできている。複数の路線が乗り入れている大ターミナルともなるとなおさらで、全容を把握するのはもはや至難の業といっていい。
そのひとつが、池袋駅だ。池袋駅が何線の駅なのか、というのは人それぞれだ。山手線を主に使う人は山手線の駅、埼玉方面から埼京線でやってくる人は埼京線の駅、板橋や志木の人は東武東上線の駅といった具合だ。練馬や所沢に住んでいる人は、いうまでもなく西武池袋線の駅、ということになる。
不慣れな人にとっては、こういうところがややこしい。乗り換え案内アプリなどを使って、「池袋駅で乗り換えて」と指示されても、実際に池袋にやってくると、乗り換え目的の路線以外にもいくつも選択肢が用意されていて、迷わせる。さらにややこしいことに、ようやく目的の路線のホームに着いたところで、行き先がいくつもあるのだ。
たとえば、西武池袋線。真っ昼間に池袋駅から発車する電車の行き先は飯能、小手指、所沢、豊島園。特急を含めれば、西武秩父もそれに加わる。ベルーナドームが目的ならば、飯能・小手指行きのどちらかに乗って西所沢で乗り換えだ。ムーミンバレーパークなら、飯能行き一択。川越観光に、という人は所沢で乗り換えて、といいたいところだが、現実的には東武東上線を使った方がいいだろう。
そして、豊島園行きである。
“としまえん”の消えた「豊島園」には何がある?
昼間は1時間に4本走っている、池袋~豊島園間を走る電車。練馬駅から豊島線という支線に入ってしまうので、所沢にも飯能にも行かない。ただ、15分ほどで豊島園駅に着く。いうまでもない、あの遊園地・としまえんの最寄り駅だった駅だ。いまは、としまえん跡地にオープンしたハリー・ポッターのテーマパーク「ワーナーブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(スタジオツアー東京)の最寄り駅になっている。
だから、池袋駅から豊島園駅行きの列車に乗る人は、その多くがスタジオツアー東京に行く人だ。数年前まではハイドロポリスを堪能しようという人たちだった。豊島園駅に着くと、かつてはとしまえんのゲートだった、駅の目の前にある公園の中に入って少し歩けば、スタジオツアー東京である。
だいたい、目的地があると人はそこに一目散。豊島園駅という駅の周りには他にいったい何があるのか、ということには目もくれない。せいぜい、駅前のドトールかスタバでひと休みするくらいだろうか。
ならば、というほど偉そうなことをいうつもりはないが、豊島園駅というかつてはとしまえん、今はスタジオツアー東京の最寄り駅に、いったい何があるのか。やはり町を歩いてみなければならない。