すると、こちらももうすぐに住宅地の中に入る。東側とは違ってあいだに大通りを挟んでいない分だけ、駅前の喧噪から静謐な住宅地への移り変わりが唐突に感じられる。旧としまえん沿いには向山庭園という立派な和風庭園があるし、どの住宅も緑豊かな実に静かで、落ち着いた住宅地だ。立派な邸宅も多く、高級住宅地といった趣である。
旧としまえんの外周に沿うように、その住宅地の中を歩く。コンビニも、自販機もない、徹底的な住宅地。尾崎豊の『15の夜』の舞台になったという公園もその中にあるが、とても盗んだバイクで走り出す人とは縁遠そうな住宅地。この辺りの住宅地の中で暮らしている人たちにとっては、豊島園駅は遊園地やテーマパークの最寄り駅ではなく、通勤通学の最寄り駅なのだろう。
フェンス沿いを歩いてゆくと川が…
さらに住宅地の中を進む。整然とした住宅地ではあるのだが、かといって碁盤の目のように整地されているわけではない。勾配の急な坂もいくつもあり、この先行き止まりの道も少なくない。コンビニのように目印になるものもないから、迷い込んだらなかなか抜け出せそうな気がしない。せいぜい、目印になるのは旧としまえんの外周に巡らされている白いフェンスくらいである。
フェンス沿いを歩いてゆくと、川があった。石神井川だ。石神井川は小金井公園付近を源流として練馬・板橋区内を流れて王子駅近くの飛鳥山公園を過ぎると隅田川に注ぐ。小さいけれど意外に立派な川だ。
その石神井川は、旧としまえんの真ん中を貫くように流れていた。川の向こうには、もうすでによく整備された公園が見える。ここもかつてはとしまえんだったエリア。跡地を整備して、2023年5月に開園したばかりだ。いくつか遊具もすでに置かれていて、子どもたちが遊んでいる。とてつもなく暑いのに、彼らは実に元気である。
そのまま川を渡り、公園の脇をずっと歩く。スタジオツアー東京は石神井川の北側に設けられていて、外周沿いを歩くと並木道の向こうに来園者たちが楽しんでいる姿がちらりと見える。
反対側は、どこまで歩いても住宅地である。その住宅地を行ききると、再び豊島園通りに出て、旧としまえん外周散歩はおしまい。最後にもういちど石神井川を渡って、「豊島園 庭の湯」の間を抜けると、再び西武豊島園駅の駅前に戻ってくる。