文春オンライン

退職金への課税強化と日本人“二極化現象”…捨て置かれるサラリーマンの未来は

2023/07/25
note

サラリーマンは政治家から捨て置かれる

 もともとサラリーマンは税金のことにはまるで無知といってよい。毎月給与から税金は源泉徴収されているので、まず関心がない。確定申告をすることも稀なので、そもそも税の構造についての知識もない。今回の退職金増税も騒がれたところで最終的には「ま、しかたないや」で片が付くと思っているに違いない。

写真はイメージ ©iStock.com

 これが消費税を上げるなどと言えば、毎日買い物をしている国民全員が反旗を翻すが、こと退職金ならばサラリーマンの中でもそろそろ定年というゴールが見えかかった人たちがいきり立つくらいのものである。政治家にとって大切なのは政治家という職業を事業継承していくことだ。政治家は多くが自らの政治団体を持つ。親の政治団体から子の政治団体に寄付していくことで相続税を逃れることができるのはよく知られているところだ。また自分たちの有力支持層である宗教法人には課税を行わないことで、強固な支持基盤を維持することができる。

 それに比べてサラリーマンは所詮、企業の勤め人である。会社の言うことは聞かなければならない。ここに課税を強化したところでさして影響はないと踏んでいるようにみえる。サラリーマンでは生涯所得が足りない、自分の能力で個人事業主を選択する人も最近増えているが、すでにそこにも国はインボイス制度を導入してしっかり税を徴収するための網を張り巡らしている。

ADVERTISEMENT

マンションでの思わぬ課税も

 最近話題になったマンション節税に対する封じ込めも、一見するとタワマン節税を行う富裕層に対して課税を強化したように映るが、本質は異なる。今回の改正はタワマンだけが対象なのではなく、相続の際のマンション評価額全体の考え方を改めるものだ。相続対象資産にマンションがあり、その評価額が実勢価格と1.67倍以上乖離していれば、一律で実勢価格として評価し、これに0.6倍をかけた額を課税対象価格とするものだ。

 タワマン節税に警鐘などと報道されるが、実は節税目的で買った富裕層だけでなくマンションに住む多くの一般市民も対象となるのである。相続の際の基礎控除額はすでに2015年にそれまでの控除額の6割相当に減額している。マンションの実勢価格が高騰を続けていることから、今後は大都市圏に住むかなり多くの世帯で二次相続の際などに相続税が課税されるケースは増えてくることが容易に予想される。おそらくマンションでの思わぬ課税に驚く世帯が出てくるはずだ。