資産を巡るバトルでも、相続税対策でもない。最近の相続現場では、親が遺した「いらない不動産」に悩まされる「新・相続問題」が多発しているといいます。

 ここでは不動産コンサルタント・牧野知弘氏の新刊『負動産地獄 その相続は重荷です』(文春新書)より一部抜粋して紹介。プロが教える「資産になる不動産、ならない不動産」の見極め方とは?(全2回の2回目/最初から読む

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 相続にあたっては、資産を相続させる被相続人(例えば親)とこれを受け取る相続人(例えば子)の間で、事前に資産の内容をよくチェックしておくことが大切といっても、現預金や上場有価証券、保険などは、金額を把握しやすいのですが、やっかいなのが不動産です。

 資産価値が見込める不動産ならば、これを自らの住居としてもよいし、他者に賃貸して賃貸料を受け取ることもできます。相続の際には、不動産について土地は路線価評価額、建物は固定資産税評価額で評価されるため、時価よりも安く評価されています。したがって相続するにあたっては額面以下の評価額で受け取れるはずなので、「とってもお得」というのがこれまでの概念でした。

売却しようにも買い手がない

※写真はイメージです ©iStock.com

 しかし、これはすべての不動産について利用価値がある、あるいは利用しなくても所有さえしていれば勝手に価値が上がる、そしていざ売却するときには確実に買い手が存在する、ということが前提条件になっていました。ところが最近では地価が下がる、利用者がいない、そして売却しようにも買い手がいない、という不動産が頻出しています。

 それどころか、毎年確実に請求される固定資産税、場所によりますが都市計画税の負担。空き家の管理。敷地内の草木の剪定、お隣さんなど近隣住民との人間関係など、不動産は所有しているだけで多くの金銭的、精神的および肉体的負担を伴うものになっています。よほどよいことがないと、そのまま所有していることにあまりメリットはありません。

 では、残して相続したほうがよい不動産、つまり資産性のある不動産と、相続前に処分しておいたほうがよさそうな不動産をどのように見極めたらよいのでしょうか。土地と建物に分けて考えてみましょう。