財産を残す親として、どの子供に何の資産を承継させるのか――きちんと準備したはずの「遺言書」によって執行された相続で、子供たちがもめる事例が増えているといいます。
ここでは不動産コンサルタント・牧野知弘氏による新刊『負動産地獄 その相続は重荷です』(文春新書)を一部抜粋して紹介します。
両親が他界し、東京郊外の400坪の土地を相続した三姉妹。三等分して相続したはずなのに、長女が激怒したワケは?(全2回の2回目/前編を読む)
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相続はある日突然やってきます。人の死は誰にも決められないものだからです。そして遺産を承継する相続人にとって、被相続人のどの遺産を相続するかは非常に重要なこととなります。
相続人にもいろいろな思惑があります。なるべく現金が欲しい、父親が持っている賃貸マンションは俺のもの、田舎にある家はどうしても相続したくない、などなど。
ただ相続にはある厳然としたルールがあります。遺言書です。被相続人となる人が、できれば生前にきちんとした形で遺言書を認めておくことは、後に相続人同士の争いを少なくするうえでも非常に重要なことです。
遺言書を残さないとどうなる?
遺言書を書くにあたっては、弁護士や司法書士などの専門家に作成してもらうこともできますが、自分で作成するのもそれほど難しいことではありません。
まず財産目録を作成し、財産の相続先を指名します。よく法定相続があるからその分は相続させなければと考えがちですが、配偶者や子供への相続では、法定相続分の半分の遺留分のみを残さなければならないだけで、あとは自身がよかれ、と思う先に相続が可能です。
遺言書では遺言の執行者を決めることもできますが、開封を家庭裁判所で行えば、特に執行者を指名しなくとも有効に執行されます。
遺言書を残さないと、相続人の間で遺産分割協議になります。あらかじめ、自身の遺産を誰にどういった形で相続させるか考えているならば、遺産分割協議で相続人である家族たちが大紛糾することを避けるため、遺言書を残しておくことが賢明と言えましょう。
思わぬ不動産をつかまされる事例も
ところが、最近は、この遺言書により執行された相続で、思わぬ不動産をつかまされることになる事例が増えています。