特に多いのが、昭和時代の発想で、地方の実家は長男に譲り、都内のマンションは次男に、残りの現金は長女になどというものです。財産を残す親として、どの子供に何の資産を承継させるのか、指定するのはもちろん自由なのですが、管理や処分に苦しむことが予想される地方の実家を引き継ぐ長男には不満が残ります。
私が実際に相談を受けた事例をご紹介しましょう。相談に訪れたのは東京郊外の約400坪の土地を相続した三姉妹です。
相続は滞りなく手続きされたが…
彼女たちの親は古くからの農家。相続にあたっては、農地を宅地に転換し、現金、有価証券とともに3人の娘に相続させました。被相続人にあたる父親は詳細な財産目録を作成し、これを遺言書に添付。姉妹にそれぞれの資産の相続をさせることが書き込まれており、相続は滞りなく手続きされました。
活用方法の相談を受けた土地は、主要国道に面し、最寄り駅からも徒歩10分以内。等価交換方式という事業方式を用いて、分譲・賃貸マンションを企画しました。
等価交換方式とは土地の時価を評価して、建物をデベロッパーが建設、デベロッパーが負担する建設費用とオーナーが持つ土地評価額を等価で交換することで、土地と建物を互いにシェアするものです。オーナーは土地代相当の金額分の土地と建物をシェアできるので、その分を賃貸資産として運用でき、デベロッパーは建設費用相当分の住戸を一般に分譲することで利益をあげることができます。
等分に相続したはずが…長女が激怒したワケ
最初の作業が姉妹の持つ土地の評価です。公図、謄本を徴求して驚きました。土地が区分所有になっていたのです。しかも、土地の一番奥から長女、次女、三女と三等分されています。国道に面しているのは三女の持ち分の土地です。
さて困りました。各人の土地の評価をする際に、3人の持つそれぞれの土地は評価が全く異なるのです。評価が異なれば、出来上がったマンションで三姉妹が所有できる部屋の数は当然異なります。国道に面する三女の土地を最も高く評価。一番奥になる長女の土地は、道路に面していないために評価は著しく低いものとなったのです。