不動産経済研究所の調査によれば、2000年から2021年までに首都圏(1都3県)で供給された通称タワマンは822棟、24万7138戸となっている。通称と記したのは、世の中にはタワマンについて明確な定義があるわけではないからだ。ちなみに同研究所が定義する「超高層マンション=タワマン」は地上20階建て以上のマンションとしている。
タワマンの価格はうなぎのぼり
さてこの期間に新たに供給されたマンション全体の戸数は121万9158戸。なんと首都圏でここ20年余りの間に供給されたマンションの20%、5戸に1戸がタワマンという計算になる。
タワマンは超高級マンションの代名詞ともいわれてきたが、いまや新しくマンションを買う人の5人に1人がタワマンオーナーだ。タワマンとしての希少性は薄くなり、一部の物件はコモディティ化しているのが現実だ。
だが販売価格はうなぎのぼりだ。数年前、東京の江東区豊洲で供給されたある新築タワマンの販売価格をみると平均価格で坪当たり450万円を超えている。上層階で専有面積100㎡を超すようなプレミアム物件になると、坪単価は600万円にも及ぶ。1戸あたり優に2億円を超えるお買い物だ。
中層階、低層階でも20坪(66㎡)で9000万円前後。一般庶民には到底手が届かない価格である。それでも販売は好調に終了した。
優良とは言いがたい立地環境
湾岸エリアが居住環境として考えて、お世辞にも極めて優良とは言いがたいものがある。海が近い、ウォーターフロントなどと礼賛されるが、海は所詮借景に過ぎず、あまりきれいとは言えない海で泳げるわけでもない。潮風は防ぎようがないため、建物寿命に当然様々な影響が出る。埋立地に建設されたものが多く、もともとの街が形成されてきたわけではないため、タワマンが林立しているだけの殺風景な雰囲気ともいえる。
いかにもとってつけたような公園の緑。それも潮風の影響でひしゃげたような樹木が多い。通勤が主体となる生活では、店舗も生活必需品が中心。ショッピングモールも大手流通や不動産会社の用意する、今やどこにでも見られるような店舗ばかりだ。
災害も心配だ。埋立地の多くでは大地震等が発生すると津波はもちろんのこと、建物自身の安全性は確保されても周辺の土地の液状化は、かつての東日本大震災発生時において証明済みだ。エレベーターが停止し、40階まで階段の上り下りで死にそうになっただとか、ゲリラ豪雨による洪水で電気室が浸水した、などタワマンにまつわる危険性の指摘は枚挙にいとまがない。また上層階と低層階の住民格差を意識したタワマン文学なる、本当にそんなことがあるのかと驚愕するような話まで巷には蔓延している。