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立地環境はイマイチなのにタワマンが売れている…“夫婦ダブルローン”の未来が不透明なワケ

2023/05/30
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タワマンは相続にもぴったり

 さらにさらに、この商品はこればかりではない。相続に悩むあなたにもぴったりだ。たとえばこのタワマンの23坪(76㎡)の住戸1億円を買うとする。1億円の内訳を仮に土地で7000万円、建物(区分所有部分)で3000万円とする。いざ相続が起こっても安心だ。土地は路線価評価なので、このエリアではおおむね1㎡あたり56万円。この住戸の土地所有面積はわずか20㎡ほどだから土地評価は1100万円。建物は固定資産税評価額で約2000万円。現金で1億円を持っていれば額面通りに課税されるが、タワマンにしておけば土地と建物を合わせた評価額はわずか3100万円。相続税の計算のもととなる評価額が7割も圧縮されてしまう。もっと圧縮したいのならば、買う際に借入金に頼ろう。借入金額を評価額から差し引くことができるから1億円全部を借入金にすれば、なんと相続評価額はマイナスに、つまり税金フリーということになる。相続後は相続人である妻や子供たちが持てば、右肩上がりで価格が上がるタワマンだから安心だ。

「現時点」ではお買い得

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 つまり、住み心地がイマイチだとか、住戸から見る東京の夜景なんてすぐ飽きるとか、災害が起こったところで建物自体が大丈夫であるならば、この金融商品はお買い得なのだ。買えるものならぜひ買っておこうというのが、あくまでも「現時点」におけるタワマン購入の結論である。タワマンをこしらえるデベロッパーやゼネコンだってわかっている。自分たちは金融商品を作っているのであって、豪華な共用部ロビーなんて所詮お飾りだし、フィットネスルームやキッチンスタジアムなんてにぎやかしにすぎないのだ。買う人たちに買うための理由さえあればよい、値上がりしていれば販売には何の問題もないのである。彼らは売れてしまえばおしまい。その先にはあまり興味を抱く必要もないし、実際気にもしていない。