2014年に私が拙著『空き家問題』(祥伝社新書)で警鐘を鳴らした、国内で増加を続ける空き家の問題は、多くのメディアで取り上げられ、社会問題として認知されるようになった。2015年には空家等対策特別措置法も立法化され、自治体などから特定空き家に認定された空き家に対しては、所有者の私権を一部制限して最終的には行政代執行によって問題となっている空き家の撤去を行うことができるようになった。最近では法律を強化し、特定空き家に対する固定資産税減免措置を廃止、京都ではあらたに空き家税も導入するなど、厳罰化の方向性にある。

増え続ける空き家

 だが、空き家の件数は減少することなく現在も増え続け、2018年には全国で849万戸の空き家が存在し、総住宅数に占める割合は13.6%、つまり国内の住宅の7~8軒に1軒が空き家の状態になっている傾向は今後も変わりそうにない。

 空き家が増加する要因は、昭和から平成初期にかけて、地方から大都市圏への人口の流入によって、地方で空き家が急増したのが要因だった。以降は、日本全体の人口が減少に向かい高齢化が進んだこと、大都市圏でも都心居住の動きが鮮明になったことから、大都市圏の郊外部でも空き家が増加し始めたことに起因している。

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 だが、実は日本の空き家問題は、日本の住宅市場の構造的な問題を含むものと理解しておいたほうがよい。構造的な問題とは、住宅市場において相変わらずたくさんの新築住宅が供給されていることである。2022年度の新設住宅着工戸数は86万戸。コロナ禍の影響から落ち込みも懸念されたが、マーケットは堅調。年間80万戸の大台を維持している。

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着目すべき貸家=アパート

 内訳は持ち家24万8000戸、貸家34万7000戸、分譲25万9000戸。分譲住宅の内の11万4000戸がマンションである。このうち着目すべきなのが、貸家である。ここで示す貸家とはその多くがいわゆるアパートである。アパートといえば、学生から単身者、あるいはカップルが住むケースが多いものと考えられるが、日本の全体人口に占める若年層の割合は縮小の一途をたどっている。にもかかわらず毎年数多くのアパートが供給されているのはなぜだろうか。

 この背景には、高齢化した地主の相続対策がある。土地を多く所有している大都市圏郊外の都市農家の多くは、高齢化と事業承継の問題を抱えている。農業をやめてしまうと農地は宅地として高額の固定資産税が課される。いっぽうで農家の息子や娘は、その多くがサラリーマンになっていて農業を継ぐ意思はない。放置しておいて相続が発生しようものなら多額の相続税が発生してしまう。彼らの多くは現金収入が豊かにあるわけではなく、金融資産が多いわけでもない。これでは税金を納めようがないのだ。

 ということでアパート建設によって節税をしてこの問題を回避しようということになる。相続の場合、土地は路線価評価、建物は固定資産税評価となり、課税対象評価額は、時価よりもかなり低く評価される。さらにアパート建設に伴う借入金は、相続財産評価額から控除できるために相続税を節税する有効な手段となっているのである。