管理会社にまで逃げられ…
これらの住戸は当然空き家化し、管理費や修繕維持積立金などが支払われないために、十分な管理ができなくなってしまう。管理が行き届かないマンションはさらに資産価値を落とすことになり、それを嫌気した住民が去っていく、このことがさらにマンション内空き住戸を増やす。十分な管理費が集まらないということは、これまで使っていたマンション管理会社から三行半を突き付けられる。彼らは管理費の中から報酬をもらっているからだ。住民が高齢化して意思決定能力に欠けるようになってくれば、管理会社のほうでも付き合いきれなくなるというわけだ。
管理会社に逃げられた管理組合を待つのは悲惨な末路だ。専門知識も持ち合わせず、有効な対策を打とうにも軍資金が枯渇し、老朽化していく建物を、ただ指をくわえて眺めていることしかできなくなる。そして結局、自分が死ぬまで建物が保っていればよいというあきらめの境地に達する。まさに破綻へのスパイラルだ。
一般的には同じ建物の中で、空き住戸である割合が30%を超えると、マンションは急速にスラム化すると言われている。スラムといえば外国の話のように考えている日本人はいまだに多いが、日本の不動産の未来もこのスラム化の問題から逃れることはできない。
日本のマンションの未来
旧耐震で設計、建築された住戸は、いずれも1981年5月以前に建築確認取得済みの物件を指す。ということは来る2030年には旧耐震設計の約100万戸を抱えるマンションがすべて築50年を迎えることになる。また2040年には平成バブル時代に建設された多くの分譲マンションが築50年を迎える。
優れた立地にあって管理体制の行き届いた物件を除いた多くの分譲マンションで、空き住戸が増え続け、管理体制に支障が生じ、スラム化の道を歩みだすのが分譲マンションの未来だ。
マンションという共同住宅では先輩格のヨーロッパ。私の知り合いのある大学教授が言う。フランス、パリのアパルトマンは築200年を超える建物が多いが、オーナーが一棟全体を所有している賃貸アパルトマンは、200年が経過してもその価値を維持し続けているが、分譲されたアパルトマンは、長い年月を経る中で必要な修繕の行き届かないものが多く、お勧めできない物件が多いのだという。
日本人にとってごくあたりまえの居住空間となったマンションの未来には、現在の日本が置かれた厳しい現実が横たわっているのだ。