3月11日、内田誠社長ら執行役がほぼ総退陣する人事が決まった日産。ホンダとの経営統合交渉が破談になった過程で、社内では何が起きていたのか。『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」から、一部紹介します。

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12人の取締役のうち10人が反対した

 ホンダ(三部敏宏社長)と日産自動車(内田誠社長)の経営統合がご破算になった。大筋はこうだ。

 両社は昨年12月、日産のリストラを前提に統合を検討することで基本合意。だが日産の計画はなかなか具体化しない。業を煮やしたホンダが主導権を握るため、子会社化を提案すると日産が猛反発。統合検討を打ち切るとした。

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日産の内田誠社長。ホンダとの経営統合がご破算になったことを発表した ©時事通信社

「対等の立場で経営統合を検討するという話だったのに、子会社化はないだろう」と日産幹部は今も憤る。事実、ホンダの子会社化案を受け入れるかどうかを検討した2月5日の取締役会では、12人の取締役のうち10人が反対した。

 子会社化案に賛成した取締役の一人は、取締役会議長で元JXTGホールディングス(現ENEOSホールディングス)会長の木村康氏。もう一人はみずほ信託銀行(笹田賢一社長)の元副社長・永井素夫氏だ。

「メーンバンクのみずほ銀行(加藤勝彦頭取)は、日産が単独で生き残るのは難しく、子会社になった方が展望は開けると考えている。だからみずほ出身の永井さんは議案に賛成し、その説得を受けた木村さんも同調した」(日産関係者)

 いま、「日産単独で生き残れる」と考える業界関係者は殆どいないだろう。では、残る10人の取締役が反対した理由は何か?

 内田社長や坂本秀行副社長ら執行役を兼務する取締役らは、ホンダ案を呑めば社内で猛反発を食らうことは必至。反対するのは理解できる。だが従業員と接点のない社外取締役が同調する必要はない。実際、木村氏や永井氏は社外取締役だ。先の関係者は「ホンダ主導で経営統合したら自分たちの日産でのポストがなくなるからだろう」と語る。《この記事の続きでは、日産社内の内幕を関係者が明かしています》

※本記事の全文(約4800字)は「文藝春秋」2025年4月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル)。