日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

日産ホンダの同床異夢

 ホンダ(三部敏宏社長)と日産自動車(内田誠社長)が経営統合に向けた協議に入った。持株会社を設立、傘下に両社がぶら下がる形を想定しており、将来的には三菱自動車(加藤隆雄社長)が合流することも視野に入れている。3社合計の世界販売台数は800万台超。実現すれば世界3位グループが誕生する。

経営統合に向けて、ホンダ・日産・三菱自動車の三社共同で記者会見を開いた ©時事通信社

 数年前からくすぶっていた両社の再編を後押ししたのは、台湾電機大手の鴻海精密工業(劉揚偉董事長)だった。2024年9月にEV事業への参入を表明していた同社は、日産への資本参加を通じて事業を拡大しようと画策。経営不振に陥っていた日産株の37%を1999年に取得し、筆頭株主になっていた仏ルノー(ルカ・デメオCEO)との交渉を始めたのだ。

 鴻海とルノーの交渉は24年12月中旬、パリで開かれていた。ホンダと日産はその動きを察知して統合交渉を加速した形だが、相思相愛とは到底言えそうにない。一体なぜか。

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「ホンダが本当に欲しいのは、日産が24%強出資する三菱自動車。ホンダの経営課題には軽自動車のEV化やアジア戦略がある。三菱自動車は、コスト競争力のある軽自動車のEVなどを製造する水島製作所を抱え、ASEANに強みを持つため、それを補完できる」(ホンダ関係者)

 一方の日産はどうか。実はルノーとの交渉に臨んだ鴻海の関潤最高戦略責任者は元日産ナンバー3。19年12月、社長就任を巡って内田氏と争い、敗れた過去がある。「切れ者の関氏より、周囲に配慮するタイプの内田氏の方が担ぎやすいという声の方が大きかった」(日産関係者)。

 内田社長にしてみれば因縁浅からぬ関氏が、鴻海の経営幹部として日産に舞い戻ってくるのは避けたい。同社がホンダとの交渉を急ぐ背景には、そんな個人的な思惑も見え隠れする。《続きは「文藝春秋 電子版」でご覧ください》