〈トヨタは、間違いや失敗の連続でここまで来た会社です。間違いを起こしてないから世界一の自動車会社になったんでしょ、と思っている人は多いかもしれませんが、実際は違う。実際は失敗ばかりしている〉

 こう語るのはトヨタ自動車会長の豊田章男氏だ。6月3日、国土交通省はトヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの計5社で認証不正があったことを発表。昨年末にトヨタグループであるダイハツでも大規模な認証不正が発覚しており、全車種の出荷一時停止に追い込まれるなど世間に衝撃を与えたばかりだった。

 今回、トヨタ本体でも同じ問題が発覚したことで自動車業界全体が大揺れしている。会見翌日の6月4日に渦中にある豊田氏が「文藝春秋」の独占インタビューに答えた。

ADVERTISEMENT

会見で説明する豊田章男氏 ©時事通信社

「見直す議論が出ても良い」

 トヨタでは、7つの車種について6つの試験で不正が発覚し、現在生産中の「ヤリスクロス」「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」の3車種は7月以降も生産停止の状況が続いている。インタビューで豊田氏は認証制度についての率直な考えを吐露している。

トヨタ本社に立ち入り検査する国交省職員 🄫時事通信社

〈認証制度は絶対に守らなければいけない制度です。ただ、例えば、今回トヨタがやっていた試験では、クルマの後ろから重い台車をぶつけるテストがありましたが、基準より700キロ重い台車をぶつけたんです。それでそのデータを使った。これはアメリカの基準を意識したものでした。だけど日本の制度は「1100キロでやりなさい」となっているから、1800キロでやるのは法令違反。(中略)

 その試験で守るべき保安基準とか、品質管理のやり方を決めているのが認証制度です。厳しい条件で試験を行っても、日本の法規に沿っていなければ法令違反と認定されます。このルールは見直しませんか、ということを今、われわれの口から言ってはいけないことはわかっています。言ってはいけませんが、でも本音を言えば、いずれかの時点では見直す議論が出ても良いと思っています〉