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「ブルータス、おまえもか」を考えたのは私

 認証不正が発覚した6月3日の夕方、トヨタは緊急記者会見を開いた。そこには佐藤恒治社長の姿はなく、会長である豊田氏自らが登壇して状況を説明している。現在の心境を問われて豊田氏が「ブルータス、おまえもか」と発言したことには批判の声も上がっていた。

〈あれには前段がありましてね。グループ会社では、最初に日野自動車の認証不正が発覚しました。社内で問題が分かった段階で、私は「早く発表した方が良い」と3回も4回も繰り返し言ったんです。ところが発表は結局、1年以上も遅くなってしまった。

 ダイハツの場合は最初、内部告発から始まりましたから、私は告発があった工場に行って、「ここに内部告発した人がいるそうだけど、ありがとう」と御礼を言いました。その人のおかげでわかったんだから。周囲にも「犯人捜しをするなよ」と言いました。だけどダイハツも世の中に説明するまでに、時間がかかった。それでトヨタグループの信頼を失うところまで持っていってしまった。(中略)

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 グループに問題が起きれば、メディアは再発防止=原因追及=犯人捜しになるんです。だからあの会見では「私が犯人です」と自首したわけです。私が自首すると何がいいかというと、現場が落ち着くんです。私は誰のせいにもしませんから。私が出て行って、「信頼を失ったのは私の責任です」と明確にすることによって、組織はもう一度動き始めるんです。(中略)

 あれ(「ブルータス、おまえもか」の発言)は考えていました。考えたのは私です。想定問答をやった時に、私だったら「ブルータス、おまえもか」とまず言うなと。そうしたら、やはり「会長はどう受け止めたか?」という質問が来ましたので、あのように答えたわけです〉

現場の「もの言えぬ」雰囲気

 今回のトヨタ自動車の認証不正は内部告発ではなく国交省が指導した調査によって発覚している。そのためトヨタ自動車の現場には、不正があっても見過ごしてしまう「もの言えぬ」雰囲気が蔓延しているのではないか、との指摘もあがっていた。

トヨタ自動車の社旗 🄫時事通信社

〈私が再三言ってるのは、絶対に完璧なんかないということ。だから間違いはするという前提でやっている。そして現場の人たちは、絶対に本音なんて言いません。だから現場の人たちが何か言ってきた時に、本当は何が言いたいんだろうなと想像力を働かせないとやっていけません。だから私の段階ではないと言っているのはそういう意味です。大切なことは、私がどれだけ感知できるかです。ただね、37万人もの従業員がいて、1000万台も売って、世界中で作って売っているんですよ。すべてを感知できるかというと無理です。ぜんぶを完璧にやるなんて無理だと思います〉

 豊田氏の独占インタビュー全文は「文藝春秋 電子版」で現在公開中。「文藝春秋」8月号(7月10日発売)では13ページにわたりを一挙掲載する。

 トヨタ生産方式に対する世間や社内の誤解や、なぜか暗くなってしまった営業利益5兆円超え決算会見の裏話、自身が「半分女性脳」と思うに至った背景などを詳細に語っている。

文藝春秋

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豊田章男トヨタ自動車会長、認証不正の真相を語る
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