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「お前なんかいらない、生まなきゃよかった!」母親とケンカして“16歳でスナックの雇われ店長”になったことも…それでも伝説のレディース総長・かおりが「母の愛」に気づけた理由

『「いつ死んでもいい」本気で思ってた・・・』 #1

2023/07/23

genre : ライフ, 読書, 社会

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 従業員は私だけだった。仕入れ、店の掃除、おつまみやお通しの仕込みも全部ひとりでやらなければならない。給料は16万だったが、使う時間もない。

 午後6時にはお店に行き、朝方の5時に寮に帰る。そんな日々だった。

 

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右がかおりさん(写真:筆者提供)

 店の客層はさまざまで、近所のおじさんたちや不良っぽい男の子たち。お店はそれなりに繁盛していた。

 大変だったが、初めて自立できた気がして、楽しかった。

 そこで、のちに私の人生を変えてくれた、なみ先輩と出会う。

 なみ先輩は5こ上で、同じ地元でもあった。お店のオーナーと知り合いで、たまに飲みに来ていたのだという。女性なのに、CBR400を乗りこなす姿がとってもかっこよかった。

 すぐになみ先輩と仲良くなり、休みの日は先輩んちに遊びに行ったり、本当によく面倒を見てくれていた。

 いつしか私も単車に乗りたいと思うようになった。

「かおり、この雑誌知らない?」

 そう言って『ティーンズロード』を初めて見せてくれたのもなみ先輩だった。『ヤングオート』『チャンプロード』そして『ティーンズロード』。かっこいいバイク、車。

 そこに載るのはすごいなぁ、当時は一読者として雑誌の向こうの人たち、自分とは別の世界にいる人たちとしか思わなかった。

母のもとへ

 5ヶ月ぐらい経った頃、どこからともなく噂が飛び込んできた。

 母が毎日小山駅で私を探しているという噂だ。

(まさか? あの母が? 私のこと「いらない」って言ったのに……!)

 半信半疑で小山駅に行くと、本当に母がいた。

 陰に隠れてみた母の姿は、とっても悲しそうに、淋しそうに見えた。

 その時、母に見つかって、私はとっさに逃げてしまった。

「かおり、お願いだから戻ってきて、ママが悪かったから、お願いだから!」

 母が後ろから泣きながら追いかけてきた。

 背中でだんだんと遠くに聞こえる母の叫び声を聴きながら涙があふれ出た。

(なんで? どうでもいいって言ったじゃん。いらないって言ったじゃん)

 なんとか振り切り、寮に戻ると、先ほどの母の姿が目に浮かんできて涙が止まらなかった。

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