「一歩間違えたら死んでたかも……。私は運がよかった」
10代の頃、男勝りな性格が原因で、やくざに拉致された経験をもつかおりさん。車にねじ込まれ、連れてこられたのは小さい平屋のアパート。死を覚悟する彼女が味わった、予想外の体験とは?
伝説の女暴走族「貴族院女族」の元2代目総長・かおりさんによる初の著書『「いつ死んでもいい」本気で思ってた・・・』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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『ティーンズロード』との出会い
『ティーンズロード』の撮影当日。
ケンカを売ってきた1こ上の女たちが赤い特攻服を着て、撮影現場の公園にやってきた。
「なんだあいつら、なに来てんだよ」
そう、私たち女族に断りもなく、乗り込んできたのだ。
「おい! てめぇら、何しに来たん?」
このままケンカが勃発するかって時に、なみ先輩が仲裁に入った。
「かおり、ここはしょうがねぇから立ててやりな」
お世話になっているなみ先輩が仲裁に入ったこと、それに取材陣も来てくれていることもあって、その場はなんとか我慢して、泣く泣く“初代”の座を1こ上に引き渡した。
今だから言うけど、この時のこいつらのせいで特攻服の上着が着られなかった。“2代目”って刺繍を直す羽目になってしまったから。
撮影後、「今後は一切かかわるな、でしゃばるな」と約束をさせ、承諾させた。
こうして、幻の初代はたった数時間で消えていった。
『ティーンズロード』の影響はすざましく、女族はあっという間に栃木、茨城など近隣の県 で名を知られるようになった。
それを知った地元のやくざが「女族のステッカーを作ったから、1枚3000円でさばけ。上納金をはらえ」と言ってきたりした。
当時、怖いものなしで“いつ死んでもいい”と思って捨て身状態だった私は、一人で事務所に出向いて直訴した。
「ステッカーも売らないし、ケツもちもいらない」
単身やくざの事務所に行ったら何をされてもおかしくない。それでも気合を入れて一歩も引かなかった。
「女でこうやって直談判に来るのは根性がある。今後なんかあったら言えよ」
私は何もされなかったどころか、逆に組長に気に入られてしまった。