小さい平屋のアパートに連れていかれた。
部屋に入るといきなり顔面を殴られた。
「誰に向かって口を聞いてんだぁ、こら」
(え! そっち? 回されるんじゃないんだ)
あっけに取られている私の腹に、やくざは蹴りを入れてくる。
「てめぇみたいなクソガキは、ボコボコにやられねぇとわかんねぇんだよ」
よろけて倒れこんだ私をまたさらに蹴って、踏みつけてくる。
息が苦しくて、声も出ない。私は初めて殴る蹴るの暴行を受けた。
どのくらい時間が経っただろうか。息を吸うと苦しくて、口の中に血の味がした。
「おいガキ! わかったか? あんまり調子こくんじゃねぇぞ。ほらもう帰れ」
「は、はい」
一礼をして、私はやっと外に出られた。
(ぶっ飛ばされただけで済んだ……)
ホッとしたのか、横っ腹が痛いことに気づいた。
(あばらをやられたか)
そう思いながら、ケンカを売る相手も少しは考えないとなぁ、と調子こんでた私は少し反省をしていた。
なんとか単車にたどり着くと、フラフラしながらやっとの思いで乗って帰った。
組長からもらった30万円の慰謝料
1週間ほどして、族の男の子が私に言った。
「組長がお前のこと探してたぞ。事務所に来いってよ」
私を「根性がある」と褒めてくれたあの組長だ。
(やべぇ、説教かよ。組のもんにケンカ売ったのがバレたか)
いやいやだったが行かないわけにはいかない。
組長の事務所に行くと「かおり、悪かったな、うちのもんが手を出して。これで、ケガをなおせ」
そう言うと組長は30万円渡してくれた。慰謝料というわけだ。
「しかし、おめぇもほどほどにしろよ、相手がもっとやばいヤツなら、死んでんぞ」
「そっすよね、以後気を付けます」
礼をして、事務所を出た。
確かに、一歩間違えたら死んでたかも……。私は運がよかった。