1ページ目から読む
3/3ページ目

 小さい平屋のアパートに連れていかれた。

 部屋に入るといきなり顔面を殴られた。

「誰に向かって口を聞いてんだぁ、こら」

ADVERTISEMENT

(え! そっち? 回されるんじゃないんだ)

 あっけに取られている私の腹に、やくざは蹴りを入れてくる。

「てめぇみたいなクソガキは、ボコボコにやられねぇとわかんねぇんだよ」

 よろけて倒れこんだ私をまたさらに蹴って、踏みつけてくる。

 息が苦しくて、声も出ない。私は初めて殴る蹴るの暴行を受けた。

 どのくらい時間が経っただろうか。息を吸うと苦しくて、口の中に血の味がした。

「おいガキ! わかったか? あんまり調子こくんじゃねぇぞ。ほらもう帰れ」

「は、はい」

 一礼をして、私はやっと外に出られた。

(ぶっ飛ばされただけで済んだ……)

 ホッとしたのか、横っ腹が痛いことに気づいた。

(あばらをやられたか)

 そう思いながら、ケンカを売る相手も少しは考えないとなぁ、と調子こんでた私は少し反省をしていた。

 なんとか単車にたどり着くと、フラフラしながらやっとの思いで乗って帰った。

組長からもらった30万円の慰謝料

 1週間ほどして、族の男の子が私に言った。

「組長がお前のこと探してたぞ。事務所に来いってよ」

 私を「根性がある」と褒めてくれたあの組長だ。

(やべぇ、説教かよ。組のもんにケンカ売ったのがバレたか)

 いやいやだったが行かないわけにはいかない。

 組長の事務所に行くと「かおり、悪かったな、うちのもんが手を出して。これで、ケガをなおせ」

 そう言うと組長は30万円渡してくれた。慰謝料というわけだ。

「しかし、おめぇもほどほどにしろよ、相手がもっとやばいヤツなら、死んでんぞ」

「そっすよね、以後気を付けます」

かおりさんの現在の姿(写真:筆者提供)

 礼をして、事務所を出た。

 確かに、一歩間違えたら死んでたかも……。私は運がよかった。