平成の時代、日本中の不良少年・少女の憧れの的だった「伝説のレディース総長」こと、かおりさん。暴走族を引退してから数十年後、母親になった彼女を悩ませた「長男の暴力事件」とは?
かおりさんによる初の著書『「いつ死んでもいい」本気で思ってた・・・』(大洋図書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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長男トシの家出
「うるせぇんだよ。くそババァ、二度と帰ってこねぇよ」
トシが家を飛び出した。理由は些細なことで、私にちょっと生活態度を注意されたのが気に食わなかったようだ。真冬の夜なのに、薄着で飛び出して行ってしまった。
絶対に寒いはず。だけど意地っ張りだから帰って来ないとわかる。なぜなら私に性格そっくりだから(笑)。
5時間かけて探し回って、公園でやっと見つけた。
「トシ、帰ろう」
「ふざけんな、俺はもう帰らねぇよ」
「寒いじゃん、帰ろう」
「俺は全然寒くねぇから、ほっといて帰れよ。俺ここで寝るから」
公園の椅子の上で寝ようとしている。
「わかった。じゃ私もここで寝る。野宿だね(笑)」
まさに根性比べだ。真夜中に息子と野宿するなんて、こんな経験滅多にない。なぜか私はこの状況を楽しんでいた。
妙に楽しそうな私を見たトシは呆れて、苦笑いしていた。
「ねぇ、なんか飲まない? 暖かいもの飲もう」
自動販売機で買ったコーンポタージュを持って真冬の公園のベンチに座る。温かいコーンポタージュが骨身に染みる。
「俺……別にママが嫌いであんなこと言ったわけじゃねぇんだよ」
「うん、わかってる」
体が温まったせいか、お互い冷静になって話ができた。