「くそばばぁ! 誰が生んでくれって頼んだ!」「お前なんかいらない、生まなきゃよかった!」「上等だよ、いなくなりゃいいんだろう! 出てってやるよ」

 若かりし頃は、疎遠だった母親と大喧嘩の末に、家出したことも……それでも、不良少女だったかおりさんが「母の愛情」に気づけた理由とは? 伝説の女暴走族「貴族院女族」の元2代目総長・かおりさんによる初の著書『「いつ死んでもいい」本気で思ってた・・・』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

10代の頃は不良として、生きていたかおりさん。そんな彼女が「母親の愛情に飢えてた自分」に気づけた出来事とは?(写真:筆者提供)

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男に絶対負けたくないと思ったきっかけ

 ある日、中学の同級生の男の子に誘われて一緒に酒を飲むことになった。

 居酒屋に行ったら、隣の席に偶然、そいつが知っているやくざが2人。同級生がいたせいか、なんの警戒心もなく一緒に飲むことになった。

「帰り、送ってくよ」

 やくざの一人が言ってきた。

「いいっすよ。原チャリで来てるんで、大丈夫っす」

「いいからいいから」

 半ば強引に車に乗せられるとそのままラブホテルに直行、やくざ2人に担がれて部屋に連れ込まれた。

「やめろよ、てめぇら。汚い手でさわんじゃねぇよ!」

「黙れガキ、静かにしろ」

 私は無理やりベッドに押し倒され、押さえつけられた。部屋の端っこにいた同級生は怖かったのか何もできずにただ立ちすくんでいた。

(やばい、やられる)

 そう思った私は観念したかのように言った。

「わかった、やりたきゃやれよ。その前にトイレいかせて」

若かりし頃のかおりさん(写真:筆者提供)

  この場をどうやって乗り切ろうか、とにかく時間を稼ごうという苦肉の策だった。

「おお、行けよ、あんまり待たせんなよ」

 薄気味悪い笑みを含みながら一人のやくざが言ってきた。

 トイレに入って、鍵を閉めた。

(このまま朝までいれば助かるかもしれない)

(いや、ドアを壊されたらおしまいだろ)

(頭を壁に打ち付けて、流血騒ぎをすれば、焦るかも)

 いろいろ考えていたら、ふとトイレの窓が目に入った。

 私の頭の少し上あたりに、斜めに開けられる小さな窓がある。あそこから逃げられるかもしれない。でも、私の体が入るのか? とにかく上ってみるしかなかった。

 便座を足場にして窓の外を見たら、部屋は3階だったため、下まで7~8mぐらいの高さがあった。荷物も靴も部屋にある。

(そんなことはどうでもいい、とにかく逃げないと)