なんとか窓に足をかけて、飛び降りてしまおうかと思ったけど、この高さはさすがにビビる。周りを見ると下水道のパイプがあった。
私は運動神経がそんなに良くなくて鉄棒にも登れないのに、火事場のバカ力とやらは凄い。
アクション映画さながらにパイプを伝って、何とか脱出することができた。
もし、あの時トイレに窓がなかったら……今思うと恐ろしい。とにかく私は逃げられたのだ。
裸足のまま1時間かけて歩いた家までの道のりで「絶対に、男には負けない」と、この時に私は決意した。
16歳でスナックの雇われママになる
その頃、新しいたまり場ができた。小山のヤンキー連中がたまっていて、そこに行くと必ず不良仲間の誰かがいる、そんなところだった。よく覚えてないけど、誰かんちにあったプレハブ小屋だったな。
そこに行ったり、族の集会を見に行ったり、相変わらずフラフラしている私を見かねて、母が「お店に手伝いに来て」と言ってきた。それで母のスナックを手伝うことになった。
でも、遊びたい盛りの私は、お店には行ったり行かなかったり、行けば行ったで母とケンカして帰ってしまう始末。
「くそばばぁ! 誰が生んでくれって頼んだ!」
反抗期のお決まりのセリフがケンカのたびに出てしまう。
「お前なんかいらない、生まなきゃよかった!」
とうとう、その言葉を母から聞くことになる。
「上等だよ、いなくなりゃいいんだろう! 出てってやるよ」
そのまま、私はまた家出をした。
家を出た私は、お金もなく、住むところもなく、途方にくれていた。
そんな時、知り合いに隣町にある寮付きのスナックを紹介してもらった。
お店はカウンターが5席と、4人がけのテーブルが2つの小さなお店。
午後7時~朝4時まで営業で、日曜が休み。
そこで、私は年をごまかし、偽名で働くことになる。