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「お前なんかいらない、生まなきゃよかった!」母親とケンカして“16歳でスナックの雇われ店長”になったことも…それでも伝説のレディース総長・かおりが「母の愛」に気づけた理由

『「いつ死んでもいい」本気で思ってた・・・』 #1

2023/07/23

genre : ライフ, 読書, 社会

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 なんとか窓に足をかけて、飛び降りてしまおうかと思ったけど、この高さはさすがにビビる。周りを見ると下水道のパイプがあった。

 私は運動神経がそんなに良くなくて鉄棒にも登れないのに、火事場のバカ力とやらは凄い。

 アクション映画さながらにパイプを伝って、何とか脱出することができた。

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 もし、あの時トイレに窓がなかったら……今思うと恐ろしい。とにかく私は逃げられたのだ。

 裸足のまま1時間かけて歩いた家までの道のりで「絶対に、男には負けない」と、この時に私は決意した。

16歳でスナックの雇われママになる

 その頃、新しいたまり場ができた。小山のヤンキー連中がたまっていて、そこに行くと必ず不良仲間の誰かがいる、そんなところだった。よく覚えてないけど、誰かんちにあったプレハブ小屋だったな。

 そこに行ったり、族の集会を見に行ったり、相変わらずフラフラしている私を見かねて、母が「お店に手伝いに来て」と言ってきた。それで母のスナックを手伝うことになった。

 でも、遊びたい盛りの私は、お店には行ったり行かなかったり、行けば行ったで母とケンカして帰ってしまう始末。

「くそばばぁ! 誰が生んでくれって頼んだ!」

 反抗期のお決まりのセリフがケンカのたびに出てしまう。

「お前なんかいらない、生まなきゃよかった!」

 とうとう、その言葉を母から聞くことになる。

「上等だよ、いなくなりゃいいんだろう! 出てってやるよ」

 そのまま、私はまた家出をした。

 家を出た私は、お金もなく、住むところもなく、途方にくれていた。

 そんな時、知り合いに隣町にある寮付きのスナックを紹介してもらった。

 お店はカウンターが5席と、4人がけのテーブルが2つの小さなお店。

 午後7時~朝4時まで営業で、日曜が休み。

 そこで、私は年をごまかし、偽名で働くことになる。

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