「可愛い孫を傷つけられて、どんだけショックか分かるか? 殴られたこの子も生意気かもしれないが、それでも手を出しちゃだめだろ。自分より立場が弱い子を」
ごもっともである。
「お宅も母子家庭で大変だと思うけど、うちの子も病院に行って診察もしてもらわないと心配だから、診察費とか諸々で10万円で示談にするよ」
「はい、わかりました」
続けて、おじいちゃんはトシに向かって言った。
「いいか、人様に手をあげたら代償を払わないといけない。ましてや未成年の場合は親が払わないといけない。お母さんのことを思うなら、今後こんなことがないように、しっかりしろ」
「はい、もう二度とこんなことはしません、本当にごめんなさい」
トシは泣きながら深々と頭を下げた。
おじいちゃんの言葉はとってもありがたかった。
「同じ立場になってみて、つくづく母の偉大さを知った」
帰り道、トシが私に言った。
「ほんとにごめん。俺はバカなことをしてしまった。ママにも迷惑かけて……俺、中学校卒業したらバイトして返すから。一緒に謝ってくれてありがとう」
「いいよ、そんなことは」
「もう二度こんなことしないと約束する」
そう思うようになってくれたことが何よりも嬉しかった。
「トシのことだから、よっぽど頭に来て手を出しちゃったのだと思う。トシ本人が一番後悔してるはずだから、私はもう言わないよ。一緒に謝るのも当たり前だし、迷惑でもなんでも私にならかけていい。でもトシが逆にやられたなら私も黙ってられない。何があっても、何をしても私には大事な息子だから」
「うん、わかった」
「トシが心から反省し、もう二度と手を出さないって思ってくれただけでいい。お金は働けば手に入るけど、今の気持ちはなかなか手に入らないよ。トシにとっての授業料だね」
いつの間にかいっぱしのことを言ってる自分がいた。私はもっと酷かったのに……もっと迷惑をかけてきたのに。同じ立場になってみて、つくづく母の偉大さを知った。