「いろいろ言ってごめんな」
「うん、私も言い過ぎた、ごめんね」
まるでケンカした後の彼氏と彼女の会話だ(苦笑)。
「しかし、寒いね……どうする?」
「わかった。帰るよ」
トシがようやく言ってくれた。
「帰ってラーメン食べよう」
かつて母が諦めずに私を探し続けたように、私も諦めなかった。
私はわずか5時間だったが、母は何日も何ヶ月も私を探し続けた……しんどかったんだろう。そこに確かな愛情があったことを改めて感じた。
学校からの呼び出し、家出……自分がやったことは自分に返ってくる。しみじみとそう思う出来事であった。
殴った代償
学校からまた呼び出しがあった。今度は中学2年になったトシが、1こ下の後輩を殴ってしまったらしい。
「生意気な口を聞いてきたから一発やっただけだよ」とトシは開き直っていた。反省してなかった。先生からも叱られたが、反発してしまっている状態だ。
事情を聞いた私は、トシには何も言わず
「相手の方の怪我はどうですか? これから謝罪に行きたいのですが、住所教えてください」
「じゃ、お母さん一緒に行きましょう」
先生も一緒に行ってくれることになった。
「ほら、トシも行くよ」
2名の先生とトシ、私の4人で向かった。
相手の方のお家に上がらせてもらうと、私はすぐさま土下座をして謝った。
「大変申し訳ありませんでした。このたびは息子が手をあげてしまって、〇〇くんを傷つけてしまってすみませんでした」
トシが私の行動を見てキョトンとしてる。
「おい、母親に土下座をさせて、お前はなんでそこでつっ立ってんだ」
少し強面な感じの〇〇くんのおじいちゃんがトシにそう言った。
慌ててトシは土下座をして「すみませんでした」と謝罪をした。