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その後ももちろん頼ることはしなかったが、狭い町ではすぐにこの話が広まった。
「かおりはやばい。かおりになんかあったら300人集まるよ」
こんな噂まで流れ始めた。
当時は“男なんていらない”“邪魔くさい”と思ってはいたが、さすがにそんな噂が流れだしたらますますモテなくなっていった。誰一人寄ってこない。
だけど、この時の私はかなり有頂天になっていた。
生意気で、男勝りで、怖いものなんてなかったのだ。
だがそんな気質が災いとなったことがあった。
やくざに拉致された
夜、むしゃくしゃしている時に、一人で単車で流すのが好きだった。
その日もいつものように流してたら、後ろから白いクラウンがパッシングして嫌がらせをしてきた。
「煽(あお)ってんじゃねぇよ」
私が単車を止めて啖呵を切ると、いかにもやくざって感じのおじさんが2人クラウンから下りてきた。
「なんだ、このくそアマ」
内心やばいと思ったが、今さら逃げられない。向かっていくしかない。
「さっきから、煽ってんじゃねぇよ、くそじじぃ」
「くそアマ、イキがってんじゃねぇぞ」
そう言われた次の瞬間、無理やり車にねじ込まれた。
暴れれば暴れるほど、押さえつけられて身動きが取れない。
「てめぇみてえなガキはしつけを教えてやんねぇとな」
(こいつらは本気だ、やられる)
そう思った私は、“もうどうでもいい”と、やられる覚悟をした。
「上等だよ、やれるもんならやってみろよ」
どうせ死ぬんだったら、かっこよく。
もしかしたら、回されて、クスリ漬けにされたり、風俗に売り飛ばされたりするのだろうか。いろんな想像が脳裏を駆け巡った。