1ページ目から読む
2/3ページ目

 その後ももちろん頼ることはしなかったが、狭い町ではすぐにこの話が広まった。

「かおりはやばい。かおりになんかあったら300人集まるよ」

 こんな噂まで流れ始めた。

ADVERTISEMENT

 当時は“男なんていらない”“邪魔くさい”と思ってはいたが、さすがにそんな噂が流れだしたらますますモテなくなっていった。誰一人寄ってこない。

 だけど、この時の私はかなり有頂天になっていた。

 生意気で、男勝りで、怖いものなんてなかったのだ。

 だがそんな気質が災いとなったことがあった。

やくざに拉致された

 夜、むしゃくしゃしている時に、一人で単車で流すのが好きだった。

 その日もいつものように流してたら、後ろから白いクラウンがパッシングして嫌がらせをしてきた。

「煽(あお)ってんじゃねぇよ」

 私が単車を止めて啖呵を切ると、いかにもやくざって感じのおじさんが2人クラウンから下りてきた。

「なんだ、このくそアマ」

 内心やばいと思ったが、今さら逃げられない。向かっていくしかない。

「さっきから、煽ってんじゃねぇよ、くそじじぃ」

「くそアマ、イキがってんじゃねぇぞ」

生意気で、男勝りだった少女時代(写真:筆者提供)

 そう言われた次の瞬間、無理やり車にねじ込まれた。

 暴れれば暴れるほど、押さえつけられて身動きが取れない。

「てめぇみてえなガキはしつけを教えてやんねぇとな」

(こいつらは本気だ、やられる)

 そう思った私は、“もうどうでもいい”と、やられる覚悟をした。

「上等だよ、やれるもんならやってみろよ」

 どうせ死ぬんだったら、かっこよく。

 もしかしたら、回されて、クスリ漬けにされたり、風俗に売り飛ばされたりするのだろうか。いろんな想像が脳裏を駆け巡った。