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「特攻服を着た少女がシャコタンから降りてきて…」“伝説の暴走族雑誌”元編集長が語る、“日本一のレディース総長”との衝撃的な出会い

『特攻服少女と1825日』に寄せて

2023/08/01

genre : ライフ, 社会

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72人分の「よろしく!」が埠頭に木霊した

 整然と並んでうんこ座りをする特攻服を着た大集団の前にのぶこが立った。少女たちの視線が一斉にのぶこに集まる。全員を静かに見回したのぶこは、まるで太古に日本を統治した卑弥呼のようにさえ見えた。

「これから『ティーンズロード』さんに『スケ連』の挨拶を見せるから、みんな気合いを入れてな!」

 すると1人の少女が立ち上がり「三河遠州女番連合第〇代目総長〇〇よろしく!」と叫び、一斉に他のメンバーが「よろしく!」と応える。次から次へと少女たちが同じように立ち上がり挨拶をする。

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 実に総人数72人分の挨拶が埠頭に木霊した。

 一糸乱れぬ統制とその挨拶の迫力に圧倒されながら撮影は無事に終わり、懸念された警察の介入もなかった。

「スケ連」のメンバーを1人1人撮影したのだが、そこはやはり少女。カメラに向かって笑顔でVサインをするのが印象的だった。しかしその瞬間、「スケ連」の「OB」がすぐに駆けつけ、「Vサインは禁止、笑顔もダメだ、常にカメラをニラみつけろ!」と叱咤が飛ぶ。

 OBは皆派手な水商売のママが着るようなボティコンスタイルで、どの顔も強面だった。このOBたちから、「スケ連」が10年以上の歴史を誇っていること、愛知県だけでなく静岡や京都など他府県にまで勢力を拡大していることを聞く。こんなレディースはこれまでに存在していない。

「三河遠州女番連合(スケ連)」のメンバー(写真=比嘉健二氏提供)

ハミ出した少女たちにとっては「スケ連」が唯一の「居場所」

 この撮影がきっかけで「スケ連」は『ティーンズロード』の人気レディースに駆け上り、度々誌面を飾った。

 普段の活動の一環である「駅番」にも密着した。豊橋、豊田、浜松、安城など「スケ連」の各支部の日常の活動だ。

「駅番」とは、各駅で「スケ連」以外の茶髪に染めたりヤンキー風な少女が駅から降りてきたら、一斉に「スケ連」のメンバーが駆け寄り「『スケ連』に入るか、髪の毛を黒くして真面目になるか」の選択を迫るのだ。

伝説の暴走族雑誌『ティーンズロード』の表紙(写真左、提供=比嘉健二氏)

 また、豊田支部の幹部会でこんな出来事もあった。新人メンバーが「集会に遅刻」「無断欠席」「連絡がない」ことなどを総長から叱咤されていた。怒鳴られた少女が一生懸命ノートに何かを書いていた。

 幹部会のあと「何を書いていたのかな?」と質問すると、「先輩の言うことをすぐに忘れてしまうのでメモしてるんです。私グレていたんで中学からも追い出されたんで、『スケ連』で字を覚えたんです。先輩への挨拶とかここで多くのことを学んだんで『スケ連』が学校みたいなもんです」

 こうした少女にとっては「スケ連」が唯一の「居場所」だったのだ。

特攻服少女と1825日

特攻服少女と1825日

比嘉 健二

小学館

2023年7月13日 発売

「特攻服を着た少女がシャコタンから降りてきて…」“伝説の暴走族雑誌”元編集長が語る、“日本一のレディース総長”との衝撃的な出会い

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