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日本人の7人に1人が該当する「境界知能」  気づかれず生きづらさ抱え、利用されて犯罪に手を染めることも…

source : 提携メディア

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このICDですが第9版までは、およそ10年単位で改訂が繰り返されてきました。1965~1974年は第8版(ICD-8)が使用され、この10年間は、IQ70~84が境界線精神遅滞という定義がなされていました。

「精神遅滞」は、今でいう「知的障害」のことです。つまり、現在の「境界知能」は、かつて知的障害に含まれていたことになります。これを現在の日本に当てはめますと、実に約1700万人(人口の約14%、およそ7人に1人)が知的障害という推計になります。

それが第9版(ICD-9:1975~1984年)以降になると、知的障害は現在のIQ70未満に変更となりました。変更の背景には、IQ70~84も含めてしまうとあまりに知的障害の人口が多くなってしまうので、支援者の確保や財政の面でも追い付かなくなるという事情もあったと推測されます。

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気づかれず支援につながらない

しかし、知的障害の基準が変わったとはいえ、IQ70~84のかつて「境界線精神遅滞」と定義されていた人たちは、障害が治ったわけではなく依然存在します。それなのに、支援の対象外とされたというのが、問題なのです。

彼ら・彼女らは子どもの頃から、「勉強が苦手」「コミュニケーションが苦手」「運動が苦手」といった学習面や身体面に問題を抱え、生きづらさを抱えているケースが少なくないのです。にもかかわらず、境界知能であることに気づかれず、さらには支援につながることが少ないため、勉強でつまずいたり、仕事が続かなかったり、引きこもったり、だまされたり、最悪な場合には、利用され犯罪に手を染めて刑務所に入ってしまうことすらあるのです。

では、軽度知的障害であれば気づかれるのかといえば、そうとも言い切れません。見た目や普段の生活態度ではほとんど区別がつかないケースもあります(知的障害を疑いながら注意深く見れば、学習上や行動上のつまずきがわかってきますが)。

また、ひと口に「軽度知的障害」とはいっても、中等度に近いIQ50と境界知能に近いIQ69では困りごとのレベルはかなり異なりますので、ここも注意が必要です。