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アメリカ人の常識「原爆投下は正しい」が揺らいだ…若者に刺さった映画『オッペンハイマー』の影響か

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genre : ニュース, 国際, 映画

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なぜ「原爆の映画」が若者に刺さるのか

この夏、2本の映画をめぐって日本とアメリカのSNSが炎上した。ひとつは『バービー』。世界中で愛されるバービー人形の実写映画で、興行収入は13億6000万ドル(約1988億7000万円)を超え、今年公開された映画の中で世界最高収入を叩き出している。

そしてもうひとつが、世界初の原子力爆弾を開発したロバート・オッペンハイマー博士の生涯を描いた『オッペンハイマー』だ。アメリカではこの2本の公開日が同じだったために、2作品の要素を掛け合わせた画像が「#Barbenheimer(バーベンハイマー)」というハッシュタグでSNSに大量発生した。

出典=『Oppenheimer』Universal Pictures

その多くは、原爆投下で発生したきのこ雲を背景にバービーが満面の笑みで写っているというもの。その画像に『バービー』の公式アカウントが“肯定的な反応”をしたことで日本のSNSでは「原爆を軽視している」と怒りの声が上がり、ワーナーブラザース・ジャパンが謝罪する事態に発展した。

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『バービー』は8月に日本でも公開されたが、『オッペンハイマー』は今のところ公開の予定はない。だから作品自体を知らない読者も多いと思われるが、この作品がアメリカ人、中でも若者の間でヒットしているのだ。イタリア、ギリシャなどで遅れて公開されると、8月下旬のグローバル興行収入は『バービー』を超えたという。この後中国での公開に伴い、さらなる興収が期待されている。

『バービー』のようなエンタメ性はほとんどなく、それどころか凄惨(せいさん)な描写が多いこの作品が、なぜここまで若者に刺さるのだろうか。

原爆に関心を持つ若者が増えている

特にアメリカでの観客の年齢層に注目したい。ネットメディアによれば『オッペンハイマー』の観客の6割は34歳以下の若者だという。確かに「#バーベンハイマー」効果は大きかっただろうし、クリストファー・ノーラン監督の人気も影響している。しかし彼のもうひとつの戦争映画『ダンケルク』(2017年)に比べると、『オッペンハイマー』への若者の関心はずっと高い。