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「男女の恋愛にハマれない。家族の“業”に惹かれる」…『何食べ』『大奥』を生み出した漫画家よしながふみの、幼少期の“原点”

「男女の恋愛にハマれない。家族の“業”に惹かれる」…『何食べ』『大奥』を生み出した漫画家よしながふみの、幼少期の“原点”

岡村靖幸xよしながふみ

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 岡村靖幸さんが様々なゲストとトークする連載「幸福への道」。今回のゲストは、2023年10月からシーズン2の放送が開始したドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京)『大奥』(NHK)の原作を手がけた漫画家よしながふみさん。

 岡村さんとは初対面でしたが、新旧漫画談義と料理の話で盛り上がりました。『週刊文春WOMAN2023秋号』から一部抜粋の上、紹介します。

よしながふみさん(左、本人提供)、岡村靖幸さん(右、撮影:杉山拓也/文藝春秋)

まだ「BL」という言葉がなかった時代…なぜハマったのか

岡村 『山月記』(注:中島敦の短編小説。唐の時代、詩人になる望みに破れ虎になった男・李徴の話)に影響受けられたそうですね。

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よしなが え! なぜそれを?

岡村 毎回、ゲストの方についての資料をたくさん読むんですが、その中に見つけました。僕も『山月記』が大好きなんですよ。

よしなが 高校の頃に教科書で読んだんです。国語の先生に「面白かった!」と言ったら、「カフカの『変身』も読むといい」と。

岡村 僕も高校の教科書で読んでめちゃくちゃ影響を受けたんです。

 だから、高校時代に組んでいたバンド名、「山月記」でした。

よしなが へえ~!

岡村 高校生ってまだ何者でもないじゃないですか。でも、自分なりのプライドはあるので、過剰な自尊心が自分を化け物にしてしまう物語が心に響くんです。

よしなが 本当に。先生が黒板に「尊大な羞恥心」と「臆病な自尊心」と書いてイコールで結んで。「同じなんですよ、これは」と。

岡村 小説の中に出てきますもんね。「我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である」。主人公は最後虎になっちゃうという。

よしなが そうそう(笑)。

岡村 あと、この頃に影響を受けたといえば、僕は『日出処の天子』。よしながさんもですよね。

よしなが 岡村さんも山岸凉子先生がお好きなんですね!

岡村 僕が初めて読んだのは18、19歳の頃。聖徳太子(厩戸王子)が美しく妖艶で、超能力もあり、非常にミステリアスに描かれていて、狂気を孕んでいると感じたんです。その年頃っていろんなことに悩むじゃないですか。心理学や哲学の本を読み漁ってみたり。そこにズバッとハマったんです。

 そして、男が男を好きになる耽美な世界観にも引き込まれて。僕にとって初のBL漫画体験だったんです。ボーイズラブ。当時はまだその言葉がありませんでしたが。