2022年7月期に、BLドラマ『先輩、断じて恋では!』『みなと商事コインランドリー』が放送されている。

「ついにここまで来たか……」

 両作品を観て、ついそう呟いてしまった。

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『みなと商事コインランドリー』(番組公式SNSより)

“人間愛”を描いた『おっさんずラブ』『チェリまほ』

 単発ドラマ(2016年)を経て、連ドラ(2018年)が社会現象になり、映画化、続編も作られた『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)を契機に、ドラマで様々な性のあり方が描かれることが増えた。

 その一方で、『おっさんずラブ』は林遣都を投入し、BL好きの人々の心をくすぐりつつも、コメディーに振り切ったことで、“人間愛”を描いた。制作側も「BL(ボーイズラブ)作品ではない」と強調してきた。現実世界には根強く蔓延るセクハラやパワハラ、差別などの概念がなく、悪人が存在しないファンタジーな世界観であることも大きな特徴だった。

おっさんずラブ(番組公式SNSより)

 また、よしながふみ原作・西島秀俊×内野聖陽主演の『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の場合、同居する同性カップルが主人公だが、“日常”を丁寧に描いたホームドラマ。そこには「お金」の話も「老い」の不安、家族の問題もあって、身につまされることばかり。だからこそ「大事な人と一緒に食事をする」愛おしい時間が主題となっていた。

ドラマ界の間口を広げた「パイオニア的BLドラマ」

 “おっさん”や“名優”を主軸に据え、普遍的な愛や良質なホームドラマが作られたことから、ドラマ好き・映画好きの層が注目し、男性同士の恋愛を描く作品の間口が大きく広がった。その延長線上で「BL」のお茶の間への浸透度・受容性も格段に高まった。

 その先に、純粋BLを普遍的かつ優しくもどかしいファンタジーに仕立てた赤楚衛二×町田啓太の『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年/テレビ東京。通称『チェリまほ』)が登場。見目麗しく愛おしい男性カップル複数組の恋心と同時に、自分を見てくれ、理解してくれる相手がいる安心感と信頼感、低い自己肯定感からの回復が丁寧に描かれていった。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(番組公式SNSより)

 言ってみれば、こうしたドラマ界に大きな風穴を開け、間口を広げ、注目コンテンツに育てていった開拓者たちの功績の上に、現在のBLドラマがある。だからこそ、先述の2作『先輩、断じて恋では!』『みなと商事コインランドリー』を観ると、そのスピード感や平和度、あまりに真っすぐピュアにBLであることに、少々面喰いつつも、ニヤニヤしてしまう。