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阿部慎之助の「僕は変わる」「僕は変わらない」発言を考察。巨人という大河ドラマ新章の楽しみ方

文春野球コラム クライマックスシリーズ2023

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 東京ドームのシーズンシート。

 来季2024年の予約申し込みの受付が始まっていますが、その宣伝のポスターの豪華さに注目が集まっています。

 松井秀喜さんを筆頭に、江藤智さん、清水隆行さん、高橋由伸さん、上原浩治さん、高橋尚成さん。

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 全員がタイトルホルダーであり、煌めくスター選手。2000年、ミレニアムの年に日本一に輝いたメンバー。ここに参加していない工藤公康さん、清原和博さん、桑田真澄さん、元木大介さん、仁志敏久さん、二岡智宏2軍監督など日本人選手中心のスター軍団。

 そして、この年のドラフトで1位指名でジャイアンツの門をくぐったのが来季からチームを統べる阿部慎之助新監督です。

 このスター軍団に阿部新監督を加えたメンバーが日本一に輝いた2002年。自分が見始めた1993年からのジャイアンツのなかで、最強チームのベスト3には確実に入る2002年メンバー。

 しかし、2002年のオフに松井秀喜さんがFAでヤンキースに移籍。そのほかのメンバーはほぼチームに残り、ヤクルトの主砲・ペタジーニさんを補強したものの、迎えた翌2003年以降は、4年連続で優勝から遠ざかります。

 決して長く続く王国を築いたわけではない2000年代前半のドリームチーム時代。

 しかし、約20年の時を経て、冒頭に紹介したその時のメンバーの多くが再集結したポスターやCMを見て、圧倒的に心が躍る自分。

 3連覇を果たした2000年代後半のチームにも、2010年代前半のチームにも感じない、このカリスマ性溢れる魅力を感じる理由は一体なんなのか…。

 1つの結論に至りました。

巨人新監督に就任した阿部慎之助 ©時事通信社

変わるのはチームだけじゃない

 チームの移り変わり以上に、僕自身と時代が変わっているんだ。

 2000年代前半のドリームチーム。チームと僕をつなぐのはテレビと新聞でした。テレビの中でまばゆく輝くスター選手たちは、自分から見たら遠く彼方の大人でした。

 対して2000年代後半のチームと僕の距離は一気に縮まります。現地観戦が増え、テレビからスマホでの観戦へと変わっていきました。

 地上波のテレビでの試合放送の減少という時代の流れによる変化。そして、自分自身が年をとったことによって2000年代後半のチームには同世代の選手が若手として登場してきたのです。

 さらに時は流れ、自分と同世代の選手たちは主力になり、今やベテランとなって球界に残っている選手もだいぶ少なくなってきました。

 いつしかグラウンドに立つほとんどの選手は年下になり、イキのいい若者の躍動を見ては俺もまだまだ頑張ろうと刺激をもらう楽しみ方に。

 テレビの中でスターたちの躍動を眺めては興奮をもらっていた、あの時のドリームチーム。そのチームからジャイアンツを率い続けた名将中の名将の原辰徳前監督。

 自らの引退試合で語った「夢の続き」を17年間も務めあげ、9度のリーグ優勝、3度の日本一、さらには世界一の監督と数々の栄誉を手にしたまばゆすぎる若大将。

 その原前監督の就任とほぼ同時期にチームを支え始めた、若かりし頃の阿部新監督。

 入団当時は細身で明るい笑顔と共に「サイコーでーす!」と軽やかに。

 徐々にプロ仕様のたくましい体型と威圧感ある表情をまとい始め「最高ですっ!」と力強く。

 体型は入団した当時のように、表情は主将として厳しさを漂わせていた時のような風貌になっての監督就任。

 ジャイアンツという壮大な大河ドラマの新章。その船出がどのようなものになるか。乗組員に航路に目的地。1人のファンとしては、力強い順風を吹かせたいと願うばかりです。

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