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ジャニー氏の痕跡を、この世から一切なくせば解決するのか? “戦後最悪”の性加害事件を風化させない“たった1つの方法”

2023/10/17
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 また、今年設けられた外部専門家のチームも対象にすべきだろう。調査報告を作る際、彼らは、事務所関係者にヒアリングした。藤島前社長の他、前副社長の白波瀬傑氏、部長、チーフマネージャーら18名である。その証言を文字起こしし、公開すべきだ。

ジャニー喜多川氏の痕跡を残すことで、彼を歴史の中に葬れる

 特に、白波瀬氏は、マスコミ対応の責任者で、報道に圧力をかけたとされる。であれば、在職中の文書、メール、業務日誌も公開すべきだ。これから、いつ、どこで、誰と、どんなやり取りをしたか分かる。

 さらに、文春やテレビ局も、ジャニーズ事務所を巡る文書を公開してはどうか。訴訟や、番組のキャスティングを巡る交渉記録などだ。それを、事務所側の資料と照合すれば、全体像が浮かぶ。特に、ジャニ担の文書は必須である。

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 むろん、企業秘密、個人のプライバシーに触れるものもあるだろう。それは、当面、非公開とし、10年、20年後、または本人が亡くなってから機密解除する。

 また、過去数十年分となれば、膨大な量になる。そこで、外部の専門のアーキビストに依頼し、文書を収集、整理する。目録や人物、組織毎の索引も作り、大学など公的機関に寄贈する。その上で、マスコミや研究者、一般の人も、許可を得て閲覧できるようにする。

 ここまでやって、ジャニーズ事務所を包んだ“得体の知れない空気”、その正体が分かる。逆説めくが、ジャニー喜多川氏の痕跡を残すことで、彼を歴史の中に葬れる。

 田中角栄は、昭和から平成に移って数年後、世を去った。その後の政界を、早坂は、傑出したボスがいないと嘆いている。「ひ弱な小秀才がひしめくドングリの背比べ」という。

 そして、それは、平成の日本全体に言えた。経済界も官界も学会も、強烈なボスを囲む車座社会は、姿を消した。そして、「コンプライアンス」という新たな言葉に置き換わる。

 その中で生き残ったのが、芸能界、ジャニーズ事務所だった。国民的アイドルをいくつも輩出しながら、戦後最悪の性加害も生む。それは、昭和という人間臭い時代の光と闇でもあった。

 その意味で、乃木坂の本社で撤去されたJohnny & Associatesの看板、それは、昭和の幕が完全に下りたことを意味した。

ジャニー氏の痕跡を、この世から一切なくせば解決するのか? “戦後最悪”の性加害事件を風化させない“たった1つの方法”

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