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「『世界に一つだけの花』のあとグループの仕事が忙しくなり…」稲垣吾郎(49)が30代前半に“本当はやりたかった仕事”

稲垣吾郎インタビュー#1

2023/10/29

genre : エンタメ, 映画

note

――最後に役所さん扮する御目付役と対決するシーンがありますが、あらためて考えると『笑の大学』(2004)に主演していたふたりですね。

稲垣 そうなんです。僕は初めから意識していましたよ。『十三人の刺客』の現場で役所さんと最初にお話しした時、「『SmaSTATION!!』で僕が監督した『ガマの油』のこと、変なふうに言ってたでしょう?」ってチクッと言われたんです。『SmaSTATION!!』ではその月の公開作に順位を付けたりしていたので、ちょっと皮肉めいたことを言ってしまったのかな。

 もちろん役所さんは冗談なんですけど、少し気まずいなと思いながらご一緒していました。でも面白かったな。『笑の大学』ではまったく違う役でご一緒させていただきましたけど、いま思うと当時の役所さんの年齢を僕はもう越えているんです。当時の役所さんが40代後半で、僕は31歳。なにか感慨深いですよね。

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『SMAP×SMAP』でコントやお笑いをやって集大成になった“名作映画”

――稲垣さんは2017年まで出演したバラエティ番組『SmaSTATION!!』で、映画を批評する「月イチゴロー」というコーナーを担当していましたが、実はそこで『笑の大学』についてもみずから話していたんです。「ここまで褒められたのは芸能界に入って初めて」というくらい褒められた、と。

稲垣 『笑の大学』のことですか? そんなことを言ったなんてまったく記憶にないです。最近は『十三人の刺客』のことばかり言われるから、いつの間にか記憶が上塗りされたのかも(笑)。

©️榎本麻美/文藝春秋

――でも『笑の大学』では、それほどまで評価されたわけですよね。

稲垣 やっぱり三谷幸喜さんの脚本が素晴らしかったし、星護監督とは『世にも奇妙な物語』シリーズや『ソムリエ』、金田一耕助シリーズといったテレビドラマでもご一緒しましたけど、星ワールドと言われるその世界観と作品がマッチしていましたよね。

 僕に関しては、いろいろなものに翻弄されて振り回されていく役が、コメディ作品に限らず多かったんです。いまでこそ舞台『No.9-不滅の旋律-』のベートーヴェン役とか、周囲を巻き込んでいく役もけっこうありますよ。でも当時は巻き込まれる役のひとつの集大成みたいな感覚がありました。

 20代前半のころから、主に『SMAP×SMAP』でコントやお笑いみたいなことをやってきて、笑いの間とかセンスとか、そういったものを学んできた集大成でもありましたね。集大成というと大げさですけど、でも20代で学んできたものを、30代に入ってすぐに発揮できた実感があったんです。『SMAP×SMAP』のようなバラエティ番組をやっていなければ、ああいうコメディ映画はできなかったと思う。その蓄積が大きかったはずです。

「『世界に一つだけの花』を出したころグループの仕事が忙しくなって…」

――ところが『笑の大学』から『十三人の刺客』が公開された2010年まで、映画の仕事には約6年間のブランクが生まれます。