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「遺作のひとつと呼んでも過言ではない」すべてに故人の意思が反映されている、坂本龍一“最後の自伝”

『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(坂本龍一 著)――ベストセラー解剖

2023/11/07
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『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(坂本龍一 著)新潮社

 世界的に活躍したアーティストで、今年3月、病により71歳で惜しまれつつこの世を去った坂本龍一。本書は2009年に刊行された初の自伝『音楽は自由にする』以降の活動を盟友・鈴木正文を聞き手に語りおろしたもの。まず文芸誌『新潮』で連載され、本文はすべて坂本が目を通した。刊行を見届けることはできなかったが、装丁や写真セレクトにも故人の意思が反映されており、遺作のひとつと呼んでも過言ではない。

「連載準備が始まったのは2022年2月。残された時間が少ないことは関係者の誰もが覚悟していましたが、焦らず丁寧な原稿構成を心がけました。事実確認はもちろん、細かな表現にもご意見をいただけて、たとえばある作品を『壮大な』と形容したら、『自作をそうは言いません』と指摘されたり……飾らない姿勢がそのまま内容に反映されています。『本書の著者は坂本龍一である』と、自信をもって言える一冊です」(担当編集者の杉山達哉さん)

 ベルナルド・ベルトルッチら世界の巨匠から、後藤正文や斎藤幸平といった日本の若き才能まで連なる幅広い交遊。脱原発や森林保護などの社会運動への参加。著者の知識と関心、それに伴う活動範囲の広さを実感する。主な読者はYMOブームど真ん中世代の50代。長年のファンでも、多面的に生きた「教授」の意外な一面を発見するのでは。

2023年6月発売。初版3万5000部。現在3刷7万部(電子含む)
ぼくはあと何回、満月を見るだろう

ぼくはあと何回、満月を見るだろう

坂本 龍一

新潮社

2023年6月21日 発売

「遺作のひとつと呼んでも過言ではない」すべてに故人の意思が反映されている、坂本龍一“最後の自伝”

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