看護師として無数の患者の死に接してきた著者。配偶者を自宅で看取ったことを契機に出家し、今は現役の看護師であり僧侶でもあるという特異な立ち位置から死に向き合っている。自伝的な文章と理論的考察により、その思索の全体像を示した新書が好調だ。
「剃髪をされている女性ということで、瀬戸内寂聴さんを連想される方も多いかと思います。死に向かう直前に人がどのような過程を辿るのかを本にしたい。そんな気持ちから始まった企画でしたが、著者自身への興味も、本を作る大きな動機となりました。僧侶としてのスピリチュアルな目線と、看護師としての科学的、実務的な視点で、物事を多面的に捉える女性だからでしょうか。人として大変魅力的で、それが文章にも現れていると感じます」(担当編集者の三宅貴久さん)
読者の7割は女性。新書としては珍しい売れ方だ。
「実際に身内を看取られた経験のある方や、ご自身が死に向かいつつあると意識し始めた方が読者の中心です。著者と同じ看護師や、ソーシャルワーカー、介護職といった、死や病気が身近にあるご職業の方も多いです。特に医療に携わる方には、『自分のやっていることに意味はあるのか?』と悩み、疲弊する方も少なくない。そうした方を、著者の言葉は勇気づけたり、モヤモヤから救っているのかもしれません」(三宅さん)
2019年1月発売。初版1万部。現在7刷7万2000部