若者の車離れが叫ばれて久しい昨今。しかし、日本の基幹産業たる自動車を愛する人はまだまだ数多い。そのなかでも異様な情熱を注ぐ人々に自動車の魅力を聞いた。
「会社は出禁、妻とは離婚…」カスタムが人生を変えた男たち
「車人あき」さんは、父親譲りの車好きだった。若い頃はドリフトに熱中していたが、8年ほど前にドレスアップの世界に転向。そして選んだのが、誰も弄っていないようなマイナー車種、トヨタ・アベンシスだった。
「色んな人と関わりながら、ワイワイ弄っていくのも楽しいんですよね」
そう語る「車人あき」さんだが、情熱は私生活にも影響を及ぼした。休日をカスタムやイベントに費やすようになり、妻との時間が持てなくなってしまったのだ。
「土日に家庭の時間を持てなくなったり、イベントでモデルさんと関わる機会が多くなったり、そういうことが重なり離婚することになって」
さらに、カスタムしたアベンシスは会社でも物議を醸した。SNSでの発信が従業員の間で話題になり、ついには会社への乗り入れを禁止されてしまったのだ。
それでも、「車人あき」さんはカスタムを止められないという。
「車としても便利ではないですし、とくにシザードアは雨の日に傘が引っかかったりで、もう完全にロマンでしかないです。ただ色々と犠牲にする面があっても、こうやって弄ることは止められないですね」
カスタムへの情熱が人生を大きく変えた例は、他にもある。
スズキ・ラパンをカスタムする「kenlapi」さんは、ベンツのSクラスから軽自動車に乗り換えた。それだけでなく、車の改造が許されないディーラーの仕事から内装工事の仕事に転職。休日の過ごし方まで変わったという。
「日曜が休みになったのも大きな変化でした。以前はこういったカスタムカーのイベントがあることも知らなかったので、最初は『こんな世界があるのか』と感動しきりでしたね」
カスタムを通じて新しい世界を知り、人生の楽しみ方が変わったのだ。
「転職してラパンを買ったのは正解だったと思いますよ」
彼らの話を聞いていると、カスタムは単なる趣味ではなく、生き方そのものを変える力を持っているように感じる。家族との時間、仕事、人間関係……。様々なものを犠牲にしてでも、彼らはカスタムを続ける。
情熱の源は何なのか。それは、彼ら自身にも分からないのかもしれない。ただ、カスタムされた車を見れば、込められた想いの深さは誰にでも伝わるはずだ。

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