日本を代表する家電メーカーとして世界に名を轟かせながら、時代の変化とともに何度も苦境に立たされたソニー。その経営を立て直した経営者の発想や行動の核にあるものを、ドキュメンタリータッチで書き記した著書が好評だ。
音楽やゲームなど出世競争とは無縁なキャリアを歩んだにもかかわらず、社長になり大きな成果を上げた著者。そもそも子供時代から、日本と海外を行き来し、「異邦人」として生きてきた。「異端」が周囲に受け容れられるにはコミュニケーションが必須で、その積み重ねが、経営者としてさまざまな人の声を訊く柔軟な姿勢に繋がった。
「子供時代から会社員生活での出来事まで、具体的に振り返っていただきつつ、経営哲学を掘り下げました。おかげで、ただ経営論を語るだけのビジネス書とは違った雰囲気の本になったと思います」（担当編集者の赤木裕介さん）
エレクトロニクス部門の再編、ゲーム機事業の立て直し、映画へのコミット……描かれる出来事はどれもドラマティックだが、語り口はどこか飄々としている。
「著者が組織の危機を救うために心がけたのは、愚直に人を励まして、前を向かせること。ご本人も明るく朗らかな方です。本書の語り口にもそうした姿勢が反映されていて、穏やかで読む人を元気にしてくれますね」（赤木さん）
2021年7月発売。初版6000部。現在5刷5万8000部（電子含む）
