東京で生活しながら、片道3時間かけて富山県に住む94歳の母を「遠距離介護」している女優の柴田理恵さん(64)。2023年11月に、柴田さんが実践している遠距離介護の方法などを綴った著書『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)を上梓し、話題を呼んでいる。そんな柴田さんに、遠距離介護を始めた理由や介護の方法などを聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く

柴田理恵さん ©橋本篤/文藝春秋

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富山で暮らす母が、腎盂炎を患い「要介護4」に

――柴田さんは現在、お母さまを遠距離で介護されているそうですが、介護が始まったのはいつだったのでしょうか。

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柴田理恵さん(以下、柴田) 2017年の10月半ばに、当時88歳だった母が倒れたんです。最初に高熱が出て、近所のかかりつけのお医者さんに診てもらったら「これは入院したほうがいいですね」と言われて。腎盂炎を患っていたようです。

 当時は高熱が続いて、一時は敗血症にもなったくらいに悪化してしまって。母は1人で富山で暮らしていて、それまで要介護認定は最も軽い「要支援1」だったんですが、腎盂炎で入院している最中に検査が行われたこともあり、介護状態が2番目に重い「要介護4」になりました。

 でも、その時点では介護というよりも「病気で入院している間にどうやって元気になってもらおう」という感じだったので、「ここから介護がスタートしました」というはっきりした時期というのはないんですけれど。

柴田理恵さんと母・須美子さん(写真=柴田理恵さん提供)

――まずはご病気を治されてから、日常生活に戻るためのリハビリが必要ですものね。

柴田 高齢ですから、一旦入院するとその次は歩く練習から始めなきゃいけないんですよね。1週間でも寝ていたら、もう歩けなくなってしまうので。母は退院後も富山で1人暮らしをしたいと希望していたのですが、1人で歩けるようになるまでは1人暮らしに戻ることは不可能です。だからリハビリも兼ねて、病気が治ったらまずは介護老人保健施設(自宅復帰のためのリハビリや医療ケアを行う施設)で過ごしてもらうことになりました。

 冬が来ると雪かきが必要だったりしますけれど、そんなことはできないので、春までそこでリハビリをして、それから1人暮らしを再開するという計画で。