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箱根駅伝の裏側

青学大・太田蒼生はなぜ、駒澤大・佐藤圭汰との勝負に勝てたのか…箱根駅伝2024「TVに映らなかった名場面」往路編

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2024/01/05
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【4区】東洋大・松山選手の「松山ワープ」は健在

 区間2位の好走でたすきを繋いだ東洋大のエース、松山和希選手には「松山ワープ」という異名があります。レース中盤まではさほど目立たないのですが、終盤なぜか順位を一気に上げて、フィニッシュ。チーム計測スタッフでさえも「えっ? ワープしたの?」と驚いたことから、駅伝ファンの間でこう呼ばれているのです。

4区で区間2位、「松山ワープ」でおなじみの東洋大エース・松山和希 ©EKIDEN NEWS

 ただ、本人は後半上げているわけではなく、前が落ちてくるという感覚だそうで、酒井俊幸監督は「松山の集中力がなせる業」だと言います。

 というのも、レース終盤は血糖値が下がり、集中力が削られてきて、体の動きがどうしても鈍くなってきます。ところが松山選手はレース終盤も集中力が下がらないことが、血糖値測定でわかっているというのです。頭が冴えているから、終盤も適正なペースで走り続けることができる、ワープではなくキープする能力…これが松山ワープの真相です。

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 その松山選手の走りを沿道でぜひ見たいと思っていたのですが、今回の箱根も高速レース。4区の沿道で松山選手の走りを見ると、5区には間に合わないため諦めたのですが、箱根山中を歩いていると僕の目の前に車が停まりました。後部座席の窓がスーッと下がるとそこにはなんと松山選手。「今日もワープしましたね!」と伝えたところ「中途半端なワープですみません笑」と返されましたが、区間2位の素晴らしい走りでした。

 ちなみに東洋大は箱根駅伝の1週間前に、2区の梅崎蓮選手と松山選手をはじめとした主力メンバーが1万mの記録会に出走。普通、このタイミングでレースを入れることはありません。ここで強度上げて走るとピークがズレてしまうと考えられているからです。常識では考えられない取り組みで梅崎蓮はここで大幅自己ベストを更新。本線では8人を抜き、区間6位の走りで1区の出遅れをカバー。戦前、「シード権も危ない」と言われていた東洋大が4位という順位にまとめたのは、酒井監督の「これまでのメソッド」を変える試みにあったようです。