史上5校目の学生駅伝三冠を成し遂げた駒澤大学。2024年の箱根駅伝では他大学が「打倒駒澤」を掲げるほどの優勝候補となっている。しかし、監督である大八木弘明氏は「MARCHのブランドにはなかなか敵わないんです」という言葉を残す。

 この言葉の真意とは——。スポーツライターの生島淳氏による『箱根駅伝に魅せられて』(角川新書)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目に続く)

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リクルーティング

 日本では選手の勧誘のことを「スカウト」と呼ぶことが多いが、私はアメリカの用語にならって必ず「リクルーティング」と表現している。

 スカウトというのは、特に野球では選手の力量を吟味する人を指すが、日本ではプロ野球の球団スカウトのことを意味するにとどまらず、広くスポーツ全般で選手を勧誘することを指すようになってしまった。

 英語では、「スカウティング」といえば、試合前に相手の戦術などを分析することを指す。日本だと、視察だとか、偵察という言葉になる。このあたりが、どうもややこしい。

2024年箱根駅伝予選会

厚底シューズの登場でグンと伸びたタイム

 大学長距離界では、私の感覚では厚底シューズが出現してからリクルーティングの様子も大きく変わった。以前、神奈川大学の大後栄治監督は、「高校2年生の段階で5000m14分45秒のタイムを出していれば、ウチとしては奨学金給付対象の選手として考えていましたね」と話していた。2010年代前半だと、14分台で走れる選手は全国で200人ほどいた。それが厚底シューズの登場で、タイムがグンと伸びた。大後監督は言う。

「高校2年で14分30秒が目安になった感じでしょうかね。それほどタイムは上がっています。ただし、記録会で『作られたタイム』の場合もあって、本当に強さを示しているかどうかは分からなくなりました。いまは、その見極めが大切です」

 以前だったら15分台が持ちタイムだった選手たちが、どっと14分台になだれこんできたわけだが、エリートはさらに記録を伸ばしてきた。いまや、高校時代から13分台をマークする選手たちは珍しくなくなった。