その点、本選へと予選突破を狙う学校は、どうしてもリクルーティングでも後手に回らざるを得ない。いまは早稲田大学の学生を預かる花田勝彦監督は、上武大学時代、高校の先生方に助けてもらったという。
監督とは「縁」を結ぶ仕事
「私の場合、熊本と新潟の高校の先生方に応援していただきました。インターハイには出ていない選手でも、見どころのある選手をご紹介いただいて、チーム作りを進めることが出来たんです」
監督とは「縁」を結ぶ仕事なのだ。高校の先生たち、そして高校生との縁を作ってこそチームが出来る。縁をどれだけ作れるかによって、リクルーティングの土壌が違ってくる。分かりやすい例でいえば、監督の出身校から大学に入ってくる学生も多い。たとえば、青山学院の原晋監督は、広島・世羅高校の出身。吉田圭太(住友電工)らも世羅の卒業生だ。
中央の藤原正和監督は、前述のように兵庫の西脇工業の出身。西脇工だけでなく、須磨学園などの県内の学校からも中大を選んでくる選手が多い。また、宮崎日大高の藤井周一先生は西脇工時代の後輩で、選手として全国高校駅伝の優勝経験もある。2023年度の中大のキャプテンである湯浅仁は宮崎日大高の出身で、「西脇ライン」から中大に進むのは自然の流れだったという。
また、東海大の両角速監督は佐久長聖の監督として佐藤悠基、村澤明伸などを育て、「佐久長聖→東海大」のラインも生きているが、このところ、佐久長聖からは順天堂大へのパイプが強いと感じる。チームのエースは順天堂、準エースが早稲田、東海、といった感じだろうか。
高校から大学への流れに見る発見
リクルーティングは各校にとって生命線だ。かつて、なぜ日体大が強かったかというと、団塊の世代の卒業生が全国の高校に散らばり、自然とリクルーターとなって、大学の恩師に情報を上げていたからでもある。少子化の時代を迎え、教員数の減少が日体大の衰亡にかかわっている、というのが私の見立てだ。
高校から大学への流れを見ていくと、いろいろと発見があって面白い。隠れた楽しみ方のひとつである。